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 私の授業づくり 


筆者
工学部
応用化学科
准教授 籔内一博

1枚の紙に何を託すか

 

大学での学び、特に専門科目では、(最低限の基礎事項は別として)覚えることよりも、必要な時に持っている知識を適切に使えるようになることが重要だと考えている。私はこれまで、専門の基礎がある程度身に付いている3年生の授業を担当する機会が多かったのだが、多くの学生は試験を持ち込みなしで行うと暗記に走り、かと言ってノート等の持ち込みを認めると全く勉強しないで試験に臨む者が出てくる。そこで、これらの専門科目の試験では、事前に1枚のA4用紙を配布し、そこに手書きであれば何を書いてきても良く、試験時に持ち込めるようにしている。いわば公認のカンニングペーパーである。

 

何を書くかは学生によりさまざまであり、自分なりに要点をまとめてくる者、米粒のような文字で授業ノートを詰め込む者、演習や過去問の解答だけを書いてくる者など、見ていてなかなか面白い。試験の成績とまとめの完成度の相関を厳密に調べたことはないが、ポイントを押さえたまとめを作る学生は、理解度も高いことが多い印象がある。自らまとめ直すことで理解が進み、試験時にはその紙を見なくても済む場合もあるようだ。試験問題も暗記に頼らず、授業内容に基づいて考える過程が必要な問題をできる限り取り入れており、ノート丸写しでは満点が取れないようになっている。なお、この紙は成績評価の一部としている。

 

ノートをまとめ直すというのは、このご時世では随分とアナログな作業である気もするが、頭の中を整理するには依然として効果的な方法であると思う。また、A4用紙1枚という限られたスペースを有効に使うのにも頭を使う。

 

一方、まとめ直しの作業は、教員の側からすると、自分の授業の分かりやすさの指標になるとも考えている。すなわち、学生がまとめを作りやすい授業=目的やポイントが明確な授業、ということになるのではないだろうか。私の授業は残念ながら今のところ、そのレベルには達していないようであるけれど。

logo No.118 (2013年10月)掲載
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