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 私の授業づくり 


筆者
応用化学科
教授 幅上 茂樹

 

 

学生たちから教えられたこと

私は国立大学2校で合わせて15年間勤務したのち、家庭の事情もあって教授職を辞して開学したての小さな私立大学に移った。学生時代から工学部しか経験のない私にとって、畑違いの健康栄養学部に移ったのは英断だったと思う。しかし「大学の立ち上げに立ち会う機会など二度とない。それも面白いかも…」と案外あっさりと決めたことを記憶している。

 

私はそこで、基礎教育としての「化学」を担当した。例えば、前期・後期1年間の「基礎化学実験T・U」を立ち上げた。国立大にいたころの話に戻るが、私の学生時代は、渡された実験書の通りに、いかに効率よく実験し、良い結果を出すかだけを考えていたことを思い出す。恥ずかしい話であるが、早く終わると多少の満足感を得たが、楽しいと感じたことはなかったかもしれない。これは「実験」ではなく、もはや「作業」に過ぎなかったからだ。教員になってからも、長時間拘束される学生実験は雑用に近い意識でやっていたと思う。そのため事故なく、早く終わらせることが目標のようになっていた。ただし、これは10年以上も前の話なので、どうかお許しいただきたい。

 

私大に移って1年目、学生たちはお世辞にも化学ができるとは言い難く、実験の内容を十分に理解していない学生も少なからずいた。にもかかわらず、皆が実に楽しそうに実験をした。その実験風景は自身の学生時代も含めて目にしたことのない新鮮なものに映った。そしてこのとき、「楽しむことができる」というのが大切な能力の一つだと、今さらながらに気付かされ、教えている私の方まで楽しくなってくるのを感じた。

 

その3年後、縁あって中部大学に移り、今年で7年になる。そして、今もこの「楽しむことができる能力」を常に意識して教育に取り組んでいる。それを手っ取り早く教える方法は、私などには到底思いつくすべもないが、少なくとも「私自身が授業や学生実験を楽しむこと」が最低条件であると思っている。学生たちが化学に楽しさを発見し、楽しむことができるようになれば、あとは化学反応が自然に起こるがごとく、真の学びが始まると考えている。


logo No.139 (2018年1月)掲載
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