魅力ある授業づくりのために 中部大学広報誌から

中部大学の取り組み


私の授業づくり大学広報誌から


中部大学 大学企画室高等教育推進部ホームページ



 私の授業づくり 


筆者
国際関係学部
国際関係学科
教授 高 英求

ミニッツ・ペーパーを通じた対話

 

大学で教えるようになって、もう20年以上になる。この間の試行錯誤で、少しはましな講義ができるようになったのだろうか。 やってみてよかったと思うのは「ミニッツ・ペーパー」である。毎回の講義の終わりに、内容の要約と質問・コメントなどを書いてもらって、次回に紹介や回答をする。受講生にとっては、何より他の学生のコメントが刺激になるようである。私自身にとっても、反省点を含めた発見が多い。

 

若い人たち、そして社会人聴講生の方たちがもつ切実な思いが、ミニッツ・ペーパーを通して伝わってくる。大震災と原発事故、緊迫する東アジア情勢、深刻な経済危機、こういった難問をどう捉え、どこに希望を見い出せるのか、多くの受講生が悩んでいる。私も同じである。

 

危機の時代には、人を言いくるめようとする「学問」の底の浅さが露呈する。社会科学、特に(私の主な領域である)経済学の惨状は目を覆うばかりだ。語られるべきは、狭義の政治や経済ではなく、人間の営みと社会そのものである。幾度も繰り返されてきた危機の中で、先人たちが深めてきた知恵と洞察である。

 

社会人聴講生の方たちがいらっしゃるのは、ありがたいことである。人生の先輩からのコメントは勉強になるし、その真摯(しんし)な響きに胸を打たれる。ミニッツ・ペーパーは、シニア世代と若い学生との、ちょっとした架け橋にもなっている。お互いの考え方や感じ方を知ることができるからだ。シニア世代には、若者を歯がゆく思う気持ちがある。それに対して、おそらく若い世代には、昔あったもの(特に雇用)が失われたことへの不安やおびえがある。

 

講義でのミニッツ・ペーパーのやりとりを通じて、本当に大切なことは何なのか、どのような言葉や考え方が聞き手の心に届くのか、ということを確かめているのかもしれない。学問の良さは対話にあると信じている。たとえ限定されたかたちであっても、講義での対話を模索し続けたい。

logo No.115 (2013年4月)掲載
戻る

Copyright © Chubu University   All rights reserved.
中部大学ホームページ