CUルーブリックライブラリ手引きVer2
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されています。なによりも教員にとって、評価時間を短縮し、成績評価の一貫性と公平性を確保し、学生の学習状況や修得状況を正確に把握し、授業改善に役立つ道具だと考えられています。パフォーマンス評価(ルーブリック評価)に関しては、アメリカのAAC&U(全米カレッジ・大学協会)が、学部や学科のディプロマ・ポリシーの評価に利用可能な15個のVALUE Rubricsを公開し、広く利用を呼びかけています。これらはAAC&Uのホームページから誰でも取得することができ、国内外の多くの大学が自らの組織や機関の評価に用いています(プログラム・ルーブリック)。また、パフォーマンス評価(ルーブリック評価)のもう一つの利用方法である総括的評価(成績評価)や形成的評価に用いるルーブリックも、国内の多くの大学や機関で収集が進められ、共有化が図られています。これらは採点用ルーブリックと呼ばれ、レポートやプレゼンテーション、グループ学習の評価などに用いられています。大学設置基準(第二十五条の二)には、『大学は、学修の成果に係る評価及び卒業の認定に当たっては、客観性及び厳格性を確保するため、学生に対してその基準をあらかじめ明示するとともに、当該基準にしたがつて適切に行うものとする』と書かれています。学修の成果に係る評価とは日頃の成績評価のことであり、そこで用いるルーブリックは事前に学生に対して公開され、その基準に従って厳正に評価されることが求められているわけです。ルーブリックが公開されることで、「ルーブリックは何よりも学習者にとって学習活動や自己評価の指針としての役割」を果たし、学習者自身が学習における課題を発見し、自ら改善することへつながるのです。その意味で、ルーブリックは事前に公開するともに、評価後に返却することによってより高い学習効果を発揮することができます。一方、ルーブリックは、特定の課題や活動に特化して開発されるというよりは、かなり汎用的に活用されることも知られています。多くの場合、ある専門科目のレポートの採点用ルーブリックを、まったく異なるディシプリンの専門科目のレポートの採点にも用いることが可能です。その意味で、自らの大学の採点用ルーブリックを収集し、共有を図ることは、新たにルーブリックを用いたパフォーマンス評価(ルーブリック評価)を試してみたいという教員にとって非常に便利であるばかりか、特定の課題や活動に特化した新たなルーブリックを開発するときにも大幅な時間短縮につながります。ただし、自らの科目の採点に適したルーブリックに落ち着くまで、最低3年間の微調整が必要だとも言われています。 最後にルーブリックを用いたパフォーマンス評価(ルーブリック評価)は、一部に「学生の留年や卒業率の低下をもたらす道具」という懸念があることも事実です。しかし、客観的、公平かつ厳格な評価は、これまで感覚的に捉えがちであった学生の変化(学力や意欲)を的確に把握し、迅速な対応(補習や科目分割、ピア・サポートの活用等の学習支援)を行うための貴重なデータと方法論を提供することにつながることになることを知っておくべきです。これこそが、アセスメント・ポリシーの神髄であり、内部質保証システムの構築された組織であることの証左となります。ルーブリックは、むしろその活用によって、学生の学びを促進し、より修了率や卒業率を上げるための教育プログラムの設計や改訂に役立つ道具であると認識する必要があるでしょう。CUルーブリックライブラリが、中部大学生の学習の指針となり、適切な教育情報をもとにした教育改善の促進につながることを切に期待しています。(2016年2月) -7-

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