2021研究紹介
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64キーワード相談に応じられる内容キーワード相談に応じられる内容収縮リズム恒常性に着目した病気前診断の開発SHINTANI A. Seine 生命健康科学部 生命医科学科助教 新谷 正嶺心臓・筋肉・生体リズムについて、溶液に浸かった無固定試料の電子顕微鏡計測、信号解析・画像処理・人工知能技術による解析手法の開発、病気の予兆検出の検討 心臓は、確率的にしか振舞えないタンパク質ナノ分子モーターの化学力学反応を一生涯休まず続く頑強な心拍リズムに変換し、我々の生命活動を支える重要な臓器である。心拍リズムの破綻は速やかな死につながるため、その仕組みには試行錯誤と淘汰の果ての叡智が詰まっていることが示唆されるが、その仕組みはまだ十分に分かっていない。 近年私は、温めた心筋細胞は心拍に近い周期の収縮リズム(HSOs; Hyperthermal Sarcomeric Oscillations)を生み出すこと、その収縮リズムには、他の周期で細胞内カルシウム濃度が変化しても、周期を一定に保つリズム恒常性(CRH; Contraction Rhythm Homeostasis)が備わっていることを発見した。 現在、生体組織から分離せずに、生体分子の挙動を計測するために、溶液に浸かったままの生体試料の微細な構造と動きを計測できる電子顕微鏡ライブイメージング法の開発を進めている。この計測手法によって、心臓が体温で安定かつ効率的な心拍リズムを刻む仕組みのさらなる解明と、その破綻としての心不全等の心疾患の予兆の早期発見や治療に効果的な方法の提案を目指している。【研究テーマ】●心臓が体温で安定かつ効率的な心拍を刻む仕組みの解明●溶液中で動く試料の電子顕微鏡ライブイメージング法の開発●心疾患の病気前診断と治療に効果的な方法の提案生物物理学、生理学、医用工学、人工知能技術キーワード相談に応じられる内容キーワード相談に応じられる内容 高機能生体活性金属インプラントの開発YAMAGUCHI Seiji生命健康科学部 生命医科学科准教授 山口 誠二インプラント材へ骨結合能を付与する表面処理法、インプラント材の表面構造解析特許P106参照 最近の医療においては、人工骨、人工関節、人工椎体、人工歯根などの人工材料が大きな役割を果たしている。しかし、一般に人工材料は生体内で形成されるコラーゲン線維の膜により隔離されて骨と結合しないので、これを長期に亘って患部に固定することは容易でない。 チタン金属及びチタン合金は強度が高く生体親和性に優れるので、人工関節、人工歯根などに広く使用されている。我々は、これらの金属に簡便な化学処理及び加熱処理を施してその表面に特殊な酸化物層を形成させることにより骨結合能を付与する研究を行ってきた。これらの処理を施した金属を生体内に埋入すると、その表面に自発的に骨類似アパタイトが形成され、これを介して生体骨と金属とが強固に結合することが動物実験及び臨床試験により確認された。 現在は、これらの成果をもとに、金属表面に骨形成を促進するイオンや抗菌性を示すイオンをも導入することにより、生体内で周囲の骨の成長を促して短期間で骨と結合し、かつ抗菌性を示して感染症を防ぐ新規高機能インプラント材料の開発を進めている。【研究テーマ】●チタン金属及びチタン合金へアパタイト形成能を付与する化学処理及び加熱 処理技術の開発●化学処理及び加熱処理を施したチタン金属が疑似体液中でアパタイトを形成 する機序の解明Ti、Ti-6Al-4V合金、Ti-Zr-Nb-Ta合金、アパタイト、擬似体液、骨形成促進、抗菌性生命健康科学部生命健康科学部

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