2021研究紹介
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59キーワード相談に応じられる内容抗癌剤フルオロウラシルの効果を高める薬剤の研究MATSUMOTO Yoshihiro応用生物学部教授 松本 博フルオロウラシル系抗癌剤の作用機序、薬剤のDNA複製・修復への影響の評価、組み換え蛋白質の発現と精製 フルオロウラシル(5-uorouracil, FU) は、1957年に開発されて以来いまだに様々な癌に対する化学療法に広く使われているが、奏功率の低さ、副作用、耐性細胞の出現など改善の余地は多い。私たちは近年、FU をデオキシウリジン類似物である5-hydroxymethyl-2’-deoxyuridine (hmUdR) あるいは 5-formyl-2’deoxyuridine(foUdR) と組み合わせることにより、相乗的で劇的な致死効果が癌細胞(大腸癌細胞、HT-29, HCT 116; 膵臓癌細胞PANC-1; 肺癌細胞EXVX)に対して顕れることを見出した。それに対し、正常細胞(肺由来正常細胞、WI-38; 臍帯静脈細胞、HUVEC)では弱い効果しか見られなかった。この薬剤組み合わせの効果は、増殖が活発なS期の癌細胞のゲノムDNA中に単鎖切断を惹き起こすことに拠っており、その結果S期の途中でDNA複製が止まること、NADが枯渇することが解った。また PARP 阻害薬を加えると、DNA合成は完了するが、G2/Mチェックポイントで死に至ることも明らかになった。現在、単鎖切断を惹き起こすメカニズムの詳細解明を進めるとともに、hmUdR、foUdR 同様あるいはより以上の相乗効果を惹き起こす他のデオキシウリジン類似物を捜索している。【研究テーマ】●フルオロウラシルの作用機序、塩基除去DNA修復●ヌクレオシド類似物がDNA複製・修復に及ぼす影響の研究●組み換え蛋白質による 再構成系を用いたDNA複製・修復のメカニズムの解明抗癌剤、フルオロウラシル、DNA複製、DNA修復、組み換え蛋白質キーワード相談に応じられる内容独自HPキーワード相談に応じられる内容栄養特性とストレス耐性能を強化した作物の分子育種YOSHIMURA Kazuya応用生物学部 食品栄養科学科准教授 吉村 和也植物の抗酸化能とストレス対性能の評価、植物分子育種、遺伝子組換え 近年、地球規模での環境破壊により、耕地面積の減少や生育不順による作物の収量低下が深刻な問題となってきている。本研究室では、ビタミンC、ナイアシン、パントテン酸など植物が有する様々な有用分子の代謝経路、およびそれらが関わる植物の環境ストレス耐性機構を分子のレベルで明らかにし、劣悪な環境下でも生育可能で且つ優れた栄養特性を持つスーパー植物の創出を目指している。【研究テーマ】●ビタミン補酵素型の代謝制御に関する研究 ビタミン補酵素型分解酵素、Nudix hydrolaseの分子特性および生理機能の解明●活性酸素代謝と細胞内レドックス制御に関する研究 植物におけるビタミンC生合成制御機構および環境ストレスに応答した レドックス制御機構の解明●ストレスに応答した遺伝子発現制御に関する研究 選択的スプライシングによる環境ストレス応答性遺伝子の環境ストレス 応答制御機構の解明●環境ストレス耐性機構およびビタミン補酵素型代謝系を改変したスーパー 植物の創出活性酸素、ビタミンC、パントテン酸、ナイアシン、突然変異、ストレス応答応用生物学部応用生物学部

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