幸友23
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マネジメントスキルの必要性は、アメリカで強く感じました。 私がスタンフォード大学に留学したのは、1988年。スタンフォードはシリコンバレーの中心地で、大学の先生も会社をいくつも経営している人ばかりでした。スタンフォード大学の研究室は誰でも借りられる賃貸制で、隣の研究室にいる人が、教授なのかビジネスマンなのか、わかりません。そのような混沌とした環境下で新しいビジネスが生まれる、わくわくとした空気がありました。アメリカでは、大学と産業界が一体化し、生きた教育の現場になっているのです。驚いたのは、部活動でもお金儲けが得意で、アメリカンフットボールチームには年間200億円の収入があることです。全米一のプロフットボールチームから監督を引き抜いてくるほどの資金力に、物事を面白くするにはマネーマネジメントが欠かせないと実感しました。 アメリカでは、個人の生活においても、資金運用能力が欠かせません。年金制度は401k(確定拠出型年金)が主流で、給料から一定の金額を積み立てて自己責任で資金運用しているからです。一方、日本ではどうでしょうか。年金はほとんど国任せですよね。他者に期待しておきながら、少ない年金支給額に不平を言う、いわゆる、他者依存そのものです。このような思考の共同体が新型コロナウイルスの脅威にさらされたのだから、同調圧力が強くなるのも当然かもしれません。うまくいかないことを他人のせいにしないで、根本的な原因を自分自身に見出す思考にシフトする必要があります。 すべてのことは自分に責任があると考えて行動すると、ほとんどのことは解決できるようになります。この考え方を「自立型思考」と称して提唱しているのが、今回ご紹介する本の著者である福島正伸氏です。私が担当する授業でも、「困難を楽しむための考え方」と題して、学生にこの考え方を紹介しています。 自立型思考の概念は、大きく分けて五つあります。そのうち、自分に着目する思考方法は四つを占めます。①自己原因②自己依存③自己管理④自己評価⑤他者支援 私たちは、物事や他人との関係がうまくいかないのは、状況や相手のせいだと考えがちです。そんな時には、自分で考え方をコントロールして、自分の可能性を信じ、自分だけに期待を向けてみる。そうすれば、能力を最大限に発揮することができます。「過去と他人は変えられないけれど、未来と自分は変えられる」という考え方と似ていますね。すべては自分の責任だと考えて実践してみれば、面白いことに、いつしか物事がポジティブに展開するようになるものです。 中小企業の経営においても欠かせないのが、物事をポジティブに捉えて行動することです。新型コロナウイルスの脅威にさらされる世の中で、突破口を見出していかなくてはなりません。たとえば、廃業を考える企業が多い状況下だからこそ、M&Aで事業を拡大するチャンスだと考えることもできるはずです。必要な知識が足りなければ、専門家に頼ることも一つの手立てでしょう。その際には、産官学連携の橋渡し役である中部大学幸友会がお役に立てると思います。―萎縮した社会が寛容でない理由はそこにあるのですね。―企業経営にも応用できる考え方ですね。「夢を叶える 不可能を可能にする自立型思考のバイブル」福島正伸著 ダイヤモンド社読んで理解して実践したい書である。人は、他者に依存して安楽に生きたいと思う。しかし、依存した他者が期待通りであることは希で、期待は必ず裏切られる。安楽を求める他者への依存は苦しみと一対である。一方、自立的に生きれば、他者に依存せず、困難や失敗こそ自身を成長させてくれる機会にすることができるので、それらに挑戦することは楽しみになる。また、その過程で自分らしさを発揮できるので充実感が得られる。自立型思考は、人生に楽しさと充実、そして豊かさをもたらしてくれる。佐野充先生の26

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