幸友23
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 私たち成人は、通常、職に就いて働いています。1年間に1800時間勤務すると仮定した場合、働く人たちは、およそ20%もの時間を職場(仕事)で費やすことになります。仕事をすることは生活を担保することでもありますし、個人によっては社会参加や自己実現の重要な機会ともなっています。こういったことを考えると、仕事というのは私たち日本人にとって大きな意味をもつ生活活動といえます。重要な活動ですから、この間に仕事に関連して健康を害することは、極力少なくしたいですし、もっともっと元気に仕事をしていきたいものです。 さて、仕事で健康を害することの最たるものとして過労死や過労自殺などがあげられると思います。ともに仕事の過重性が元となる過大な身体負荷や精神負荷で発生する健康問題です。脳・心血管疾患によって死につながったものが過労死となり、精神疾患を発症し自殺という帰結を迎えた場合が過労自殺です。過労死や過労自殺は労災保険の対象であり、死ななくても、労働の過重性によって脳・心血管疾患や精神障害を発症した場合に補償の対象となります。最近20年間のそれらの支給決定件数は、脳・心血管疾患で、年間200~300件、精神障害では年間500件前後で高止まりの横ばい状態で推移しています(令和2年版 過労死等防止対策白書)。 過労死、過労自殺に対して国も対応策を実施してきましたが、メインは労働時間規制と長時間労働者に対する産業医面談という形での対応です。長時間労働に対する時間規制は抜け道もあり、必ずしもうまくいっているように思われません。サービス残業とか表面に出ない労働を労働者に課しているケースも多々あります。精神障害に対しては、今や多くの企業、組織で行われていると思いますが、ストレスチェック制度が法制化されています。年に1回ストレスチェックを実施し、労働者自身にストレスの気づきを促すと同時に、ストレスが大きい労働者には産業医や専門家によるサポートを受けてもらいストレス軽減を図る目的で行われています。ただ、ストレスチェックでは組織としてストレス対策を進めることも努力義務とされ、一応60%以上の事業所が行っていると回答しているのですが、有効な対応活動としては、まだまだなおざりになっている気がしてなりません。 現在、政府は働き方改革、一億総活躍社会を推進しています。多様な働き方を認め、そのなかで個々人にあった仕事をしていくことで、国民すべてが仕事と生活を享受しながら、社会発過労死にならない働きかた-健康に働こう-生命健康科学部 保健看護学科 教授 城 憲秀たち のりひで1123

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