幸友23
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 DNAの構造を解析する装置「シーケンサー」。1970年代に開発され、その後2000年代に「次世代型シーケンサー」として大きく進歩し、圧倒的な低コストと短時間でDNAの塩基配列を解析することが可能になりました。鈴木准教授は、この次世代型シーケンサーとコンピュータを使って植物ゲノムの解析をしています。「その進歩は、かつて国際プロジェクトとして行ったヒトゲノム解読時の解析量が、一人の研究者でできるようになったレベルです」。ただ、遺伝子の情報がわかっても、そこから自分の知りたい情報を得るためには、コンピュータを駆使してプログラミングを行い、データを解析する必要があると言います。鈴木准教授は、今夏、科学雑誌「ネイチャー」と「サイエンス」にそれぞれ掲載された論文の研究者として名を連ねました。「共同研究者の一人として遺伝子をまるごと調べる部分を手伝いました。数万個もある遺伝子の中から研究の目的に合うほんのわずかな遺伝子を見つけることができました」と、ゲノム解析の魅力を語ってくださいました。 鈴木准教授は現在、シロイヌナズナを材料として植物が油を貯める仕組みを解析中。「シロイヌナズナはアブラナ科の植物で、種の中に油を蓄積します。遺伝子の観点から見れば似た仕組みを持っているので、シロイヌナズナの蓄積の仕組みがわかれば、アブラナにも応用できるはずです」。そうして研究を進めていった結果、興味深い遺伝子を発見。「RNA分子の持つ情報を元にタンパク質が作られるときに、RNAのイントロンという必要のない部分を除去する仕組みを生き物は持っています。そのイントロンが同じ場所で除去される仕組みを調べています」。仕組みの解析が進めば、より多くの油を採取できるアブラナの品種改良へと考えがちですが、鈴木准教授の思いは違いました。「仕組みがわかれば生き物に対する理解が深まります」と、関心は生き物そのものへ。生命の設計図であるゲノムの魅力に惹かれた鈴木准教授の探求心は、生き物がどのように生きているかという根源を追究する好奇心にあるようです。                 すずき たかまさ応用生物学部 応用生物化学科 鈴木 孝征准教授シーケンサーとコンピュータを使い遺伝子情報を網羅的に解析する。シロイヌナズナの変異株(左)と野生型株(右)。油を貯める機能に関わる遺伝子が壊れると生長も悪くなる。生物学の研究を一変させた次世代型シーケンサー。生き物そのものへの理解につながるゲノム解析。バイオインフォマティクスを用いた植物ゲノムの解析バイオインフォマティクス、植物分子遺伝学専門分野研究テーマバイオインフォマティクス中部大学産官学連携推進課では、企業の皆様のニーズに応じて、関連分野の研究者を紹介しています。共同研究や委託研究など、研究支援の相談窓口としてお気軽にご相談ください。0568-51-4852(直通)産官学連携推進課[幸友会事務局]0568-51-4740(直通)幸友会事務局を介したご相談も承っております。22

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