幸友23
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7学部と大学院6研究科を擁する総合大学として知的資産を集積する中部大学。さまざまな学問分野を網羅する数多くの研究室から、今回も4つの研究室を訪問しました。産官学連携あるいは事業化等にぜひご活用ください。 会計学・ファイナンスを専門とし、証券化取引などを目的に設立される「特別目的事業体(SPE:Special Purpose Entities)の連結に関する会計基準」を研究テーマとする威知准教授。企業グループの経営成績や財政状態を知るためには、個々の企業の財務諸表ではなく、グループ各社の決算書を合算・修正した連結財務諸表が必要となりますが、その作成にあたって、どの企業がグループ内の会社に該当するのかという点が重要な要素の一つだと言います。「SPEというと難しいですが、タックス・ヘイブンと呼ばれるカリブ海のケイマン諸島に設置されるペーパーカンパニーというとわかりやすいのではないでしょうか。一般的な会社であれば、現在の会計ルールに基づいて判断することができますが、SPEについては、グループ内の会社かどうかを判断することが難しく、日本や米国、欧州を含め国際的に議論されています。こうしたSPEの連結に関する会計基準が私の研究テーマとなります」。また、近年では証券化取引の会計に関連するもう一つの主要課題である金融資産の認識中止に関する会計基準についても研究を始めています。 威知准教授が研究を始めた当初はまだSPEが認知されておらず、研究にあたっても苦心があったと言います。「当時は学会でも『SPEとは何か』というところから説明しなくてはならない状況でした。研究資料も乏しく、各種の審議資料(一次資料、内部資料)について、金融庁への情報開示請求や海外の専門図書館を訪問し入手することから始めなくてはなりませんでした」。そうした先駆者としての経験から、現在でも「一次資料、内部資料等を丹念に分析する」を掲げて研究に取り組んでいます。「私が研究を始めるきっかけとなった米国の大手エネルギー会社エンロン社の粉飾決算および経営破綻、さらには世界的な金融危機に陥ったサブプライム住宅ローン危機を端とするリーマン・ショック。その背景の一つに、実はSPEや証券化の問題があるのです」。経済に大きな影響を与えるSPEと証券化。今その在り方が問われており、威知准教授の研究への注目もますます高まっています。                 たけち のりひで経営情報学部 経営総合学科 威知 謙豪准教授特別目的事業体の連結に関する会計基準、証券化取引を考察する。左から『特別目的事業体と連結会計基準』(単著)と学生時代の恩師との共著による『スタートアップ財務管理と会計』。国際的な議論を生む、特別目的事業体の位置づけ。金融リスクを内在するSPEと証券化取引。証券化取引に関する会計規制の研究、特別目的事業体の連結会計基準会計学専門分野研究テーマ会計学20

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