幸友23
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後は、寺院の名前や家紋が入ったものも。文様にはそれぞれ込められた意味があり、形の違いから作られた時代を読み解くこともできる。日本各地で出土された瓦が展示されているので、土や文様などの違いを比べながら見ても面白いだろう。 また、ここで注目したいのが、瓦の中でも和風建築の棟の端に設置されている、厄除けの願いが込められた飾り瓦の「鬼瓦」だ。鬼瓦が日本に導入された当初は平面的な型作りであったが、室町時代頃から立体的になり、粘土を切り貼りして手づくりする鬼瓦が誕生した。現代の一般住宅に使われる鬼瓦の多くはプレスの型作りであるが、寺社等の文化財建築に使われる鬼瓦の多くは「鬼師」による手づくりだ。鬼師とは、鬼瓦をつくる職人のことで、高浜はその数が全国で一番多いといわれている。鬼瓦づくりは男性が活躍する世界であったが、昨今では女性の鬼師も少なくない。伝統的な三州瓦を守ろうと若手鬼師たちも活躍している。彫刻とやきものの両方の技術が求められる、まさに芸術品ともいえる鬼瓦は、こうした鬼師たちの技によって守られてきたのだろう。2017年には、三州鬼瓦工芸品が国の伝統的工芸品に認定された。近年では、屋根に葺く瓦だけでなく、室内に飾るインテリア小物やエクステリア用の瓦製品なども見られるようになった。こうして時代とともに瓦の需要も変化しているが、日本らしい伝統的な町並みには、やはり銀黒色に輝くいぶし瓦がよく似合う。 館内では、常設展示に加え、年間を通して絵画や写真、やきもの、現代アートなど、さまざまな分野の展覧会を2階の企画展示室で開催している。ほかにも、陶芸体験ができる創作室、フランス料理をカジュアルに楽しめるレストラン、ミュージアムショップも併設されている。美術館を訪れた際には、本物に向き合い、作陶に没頭し、食で癒されるなど、思い思いのひとときを過ごしていただきたい。身近な存在でありながら間近で見る機会が意外と少ない瓦。和風建築を見つけたときには、屋根に目を向けて飾り瓦を探してみてはいかがだろうか。上を向けば、新しい発見や驚きに出合えるかもしれない。そう、きっと気分も上がるはずだ。▲「鬼面文鬼瓦」享保7年「瓦を磨く童子」特別展、企画展を行う▶2階の展示室 「土と炎の継承 ―高浜の景色―」 2020年10月31日(土)~12月20日(日)「永瀬正敏 写真展」 2021年1月16日(土)~3月21日(日)〒444-1325 愛知県高浜市青木町九丁目6番地18TEL.0566-52-3366休館日:月曜日・火曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始※最新情報はホームページでご確認ください。http://www.takahama-kawara-museum.com/高浜市やきものの里かわら美術館館長 若松 文人さん専門的なモノをいかにわかりやすく伝えるかを心がけて、幅広いジャンルの企画展を行っています。先入観なくフラットな目で見ていただき、何かを感じてくださればうれしいです。展覧会スケジュール16

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