幸友23
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 愛知県三河地方の「三州瓦」、兵庫県淡路島の「淡路瓦」、島根県石見地方の「石州瓦」。日本三大瓦と呼ばれるこれらの中でも、三州瓦は全国で作られる粘土瓦全体の約7割を占め、生産量日本一を誇る。その始まりは、今から300年以上前の江戸時代中頃。三河湾へ注ぐ矢作川周辺で材料となる良質な粘土が豊富に採れたこと、海が近く輸送の便が良かったこと、また大都市との流通が盛んで消費地に恵まれたことにより、一大産地として発展していった。現在は、城郭や寺院、神社など伝統的な和風建築のほか、家屋の屋根材として使用される瓦だが、この瓦を建材としてだけでなく、美術的に鑑賞することをコンセプトに据えた、日本で唯一の美術館がかわら美術館だ。 1階と3階の常設展示では、考古資料としての瓦の歴史と合わせて、美術品としての瓦の造形を楽しむことができる。瓦の歴史は古く、ヨーロッパでは紀元前14世紀のギリシャ、東アジアでは紀元前11世紀の中国が起源といわれている。日本の瓦はといえば、飛鳥時代まで遡る。中国の瓦が、朝鮮半島を経て日本に伝わったのが588年のこと。百済から4人の瓦博士がやってきて瓦づくりを伝えたと日本書紀に記述が残っているという。当時の瓦の特徴として、屋根の軒の丸い部分にさまざまな文様を見ることができる。仏教とゆかりの深いハスの花の「蓮華文」、水の渦巻きとされる「三巴文」、その11高浜市やきものの里かわら美術館▲三州瓦を船で運んだ歴史がわかる 1階の常設展示コーナー「獅子文留蓋瓦(ししもんとめぶたがわら)」 19世紀▲年代順に瓦の変遷を見ることができる3階のモノコトギャラリー「鬼面文鬼瓦(きめんもんおにがわら)」室町時代 鬼面の周囲には珠が連なった連珠文が描かれる「鬼の椅子」▶建物や住人を厄災から守るとされ、古くから神社仏閣や日本家屋の屋根に取り付けられてきた「鬼瓦」。今回は、この鬼瓦の代表的な産地であり、日本三大瓦としても名高い「三州瓦」の主産地でもある高浜市のかわら美術館を訪ねました。れんげもんみつどもえもん15

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