幸友21
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これからの科学・ブダペスト宣言から20年 1999年、国連教育科学文化機関(UNESCO)と国際学術連合会議(ICSU)の共催で開催された「世界科学会議」。ハンガリーの首都ブダペストで開かれたこの会議で、“科学と科学的知識の利用に関する世界宣言(通称:ブダペスト宣言)”が発表されたことは、21世紀の科学の社会における役割や在り方を考える重要な転機となりました。当時、日本学術会議会長として会議に出席した吉川氏は、「科学とは何か」の解説から、会議が開催された背景、参加メンバー、議論内容、そして成果物であるブダペスト宣言について丁寧に紹介。現在までの歩みを振り返り、「科学と社会の関係はいろんな意味で変化した。新しい生命科学や情報ビジネスが生まれる中で、ブダペスト宣言で発信された科学者たちの意見は社会に本当に届いているのかが問題だ」と述べました。さらに「ブダペスト宣言にある“USEの科学”は、科学者ではなく人々が使うことを意味する。だから科学者が人々を巻き込み、一種の知識を生み出す仕組みを社会につくらないといけない」と話し、「これまでの科学的知識のほとんどは、科学者が研究室のような閉じた社会でつくられてきた。しかも、科学者の知的好奇心に基づいていることしか出来上がってきていなかった。この20年で少しずつ変わり始めてはいるが、“USEの科学”は未完成」と指摘。これからの科学に対して、「科学者と行動者がつながって“ループ”をつくり、協力し合いながら、地球上の問題を解決していく仕組みをもっと増やすべきだ」と強調し、その成功事例として、地球温暖化問題の取り組みを紹介。「唯一の成功事例と言える地球温暖化問題のような“ループ”を、すべての問題に適用していくことが今後求められるだろう」と話しました。講演最後に、「もし仮に、ブダペスト20という会議を開催するのであれば、このループを構築する重要性を皆さんに周知したい」と話し、講演を締めくくりました。PROFILE昭和31年に東京大学工学部精密工学科を卒業。平成5~9年の間、東京大学総長を務めた後、文部省学術国際局学術顧問、日本学術会議会長、日本学術振興会会長、国際科学会議会長などを経て、平成21年に国立研究開発法人科学技術振興機構の研究開発戦略センター長に就任。現在は同機構の上席フェローを務めている。日本学士院会員 よしかわ ひろゆき吉川 弘之氏2018年9月13日(木)、第14回目を迎える「中部大学フェア」が開催され、606名が来場しました。当日は特別講演に始まり、研究シーズ発表や施設見学会、ミニ講演会など多彩な催しが行われ、中部大学と企業、自治体、地域団体の皆様、学生が、知的財産の交流を図りました。中部大学フェア—人づくり・モノづくり・コトづくり・夢づくり—2018会場:アクティブホール(不言実行館1階)特別講演演 題講 師35

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