幸友21
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 大きな粒子では得られない特性や可能性を持つ「ナノ粒子」。堤内教授は現在、このナノ粒子の中でも磁性を持ったナノ粒子(鉄の酸化物のナノ粒子)の研究に力を入れています。酸化鉄ナノ物質は、生体への安全性が高く、MRIの造影剤になるとともに、IHヒーターのような交流磁場を当てると発熱する性質があります。こうした特性を利用して堤内教授が進めているのが、磁性ナノ粒子の表面にさまざまな反応物質をつけて、体のある部分、特にがん細胞を認識するような分子を結合させることで、がん細胞に集まる物質を生成しようという研究です。さらに、効率良く加温ができる交流磁場の発生装置も開発し、がんの温熱療法の実用化を目指しています。「専門分野は高分子化学がメインですが、最近では分析化学や有機合成化学、さらに広げて、細胞の培養から、動物実験、装置開発までも行っています」と話す堤内教授。研究内容は広範囲にわたっています。 依頼があってから結果が出るまで、ときに4~5年かかることもあるという共同研究。「新しいことに最善を尽くして挑戦する。それでもできなければ仕方ありません。でも研究には課題を解決していく喜びと面白さがあります。さらに私は今、研究するタイミングにも恵まれていると思います」と堤内教授は話します。近年は、病気の予防に重点が置かれる社会。また、最近では約3万円でヒトの唾液からDNA配列を読みとり、いろいろな病気のリスクがリストアップされ、どんな病気にかかりやすいかがあらかじめわかるような時代になってきました。そこで堤内教授が考えているのが、超早期の診断、検出、治療までを一気に行ってしまおうという試みです。「病気の兆候が表れたときにすぐに検出し、検出できたらそのまま温熱をかけてがん細胞を退治することが理想です」と言うように、体にメスを入れずに治療まで行うことで、体の負担が少なく、寿命を延ばすことに貢献できると考えています。日本人の死因の不動のトップはがん。新しい治療法の出現が待ち望まれます。応用生物学部 応用生物化学科 堤内 要教授ガンの温熱療法に応用できる磁性ナノ粒子を探索中。交流磁場発生装置標的指向性磁性ナノ粒子MRI により磁性ナノ粒子が集積している場所を検出交流磁場発生装置によりマグネタイトを温め治療する治療(温熱療法)診断投与がんの新たな治療法の実用化を目指して。体への負担軽減と健康寿命の延伸に貢献。シーズ紹介標的指向性磁性ナノ粒子の調製と機能評価高分子化学、有機化学、分析化学つつみうち かなめ研究テーマ専門分野■磁性ナノ粒子を用いた がんの診断・治療17

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