幸友20
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 2016年、シャープの買収が成立し、日本でも広く知られるようになった台湾の会社「鴻海精密工業(以下、鴻海)」。現在、世界最大の従業員を擁する受託製造の超巨大企業であり、その売上高は約16兆円ともいわれます。中川氏は、鴻海がまだ小さな町工場だった時代に創業者である郭台銘(テリー・ゴウ)氏と出会い、今日まで懇意にしているとのこと。今回はそんな中川氏に、徹底した秘密主義のためベールに包まれている鴻海の実態や、郭台銘会長の素顔についてお話いただきました。 中川氏が郭会長と出会ったのは1985年。型技術協会が開いたシンガポールでの国際会議でした。その縁から、東京大学教授を停年退職後、鴻海精密工業特別顧問に就任することになるのですが、最初の出会いについて中川氏は「当時台湾の金型工業会の会長になったばかりのテリー・ゴウに『会社を見に来てほしい』と声をかけられ、鴻海に立ち寄りました。工場を視察するだけだと思っていたら、突然『社員に講演してくれ』といわれ、講演をしたのを覚えています」と振り返り、「テリーは非常にエネルギッシュで決断の早い人。創業当時、鴻海はテレビの“つまみ”部分をつくる小さな町工場に過ぎなかったが、一代で巨大企業に育て上げた手腕はすごい」と評価しました。郭会長の決断の早さを表すエピソードの一つとして、近年の液晶事業を挙げ、「以前、『今後はブラウン管から液晶に代わる』という話をした際、テリーはすぐに液晶に精通した知人に電話し、その2、3カ月後には液晶工場に進出を決定していました」と回顧。さらに、シャープ買収後、郭会長が“8K”に目を付けて間もなく、中国・広州市で世界最大級の8K液晶パネル工場の起工式を行った例も紹介しました。そして、「決断の早さが裏目に出ることもあるが、シャープ買収後、鴻海流の経営再建によって黒字化を達成したのはテリーの力。計画されていた人員整理も行わず、ボーナスも以前より増やして、立て直しが進んでいるところです」と、改めて郭会長の経営術を称えました。 講演では、鴻海の強みについても分析。現在は機械部品の製造、電子部品講 師演 題PROFILE1968年に東京大学精密機械工学博士課程を修了後、1979年東京大学生産技術研究所の教授に就任。その後、東京大学付属先端素材開発研究センター長、理化学研究所研究基盤技術部長(兼務)などを経て、2000年にファインテック株式会社を創業。同時にファナック㈱監査役、㈱ツガミ取締役、オーエスジー㈱取締役監査委員、台湾鴻海精密工業特別顧問、㈱ニデック技術顧問(いずれも非常勤)を兼務している。 −シャープを傘下にした− 中国最大の製造業「ホンハイ精密」とは なかがわ たけお中川 威雄氏東京大学名誉教授、ファインテック㈱代表取締役会長、台湾鴻海精密工業特別顧問、元シャープ㈱取締役2017年9月14日(木)、今年で第13回目を迎える「中部大学フェア」が開催され、約640名が来場しました。当日は特別講演に始まり、研究シーズ発表や施設見学会、2018年4月に誕生する「宇宙航空理工学科」をテーマにしたミニ講演会など多彩な催しが行われ、中部大学と企業、自治体、地域団体の皆様、学生が、知的財産の交流を図りました。中部大学フェア—人づくり・モノづくり・コトづくり・夢づくり—2017特別講演アクティブホール(不言実行館1階)会場35

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