幸友20
35/44

さった各メーカーのレベルアップや新規雇用の創出にもつながり、産業全体が成長していくと考えています。 MRJはライバル機に比べ騒音域が40%以上小さく、CO2発生量も20%以上少なくなっています。空港周辺に迷惑を掛ける度合いが低く、騒音の大きさによって空港使用料が高くなっていく今後を考えると経済的です。また、CO2発生量が抑えられることで環境への寄与が大きく、エンジン効率と燃費の良さにもつながるため、「環境適合性」と「経済性」に優れていると言えます。さらに、MRJは客室の天井が高く、最新の飛行機と同じ椅子幅で、荷物収納棚も大きいといった「快適性」を備えています。以上のことから、セールスポイントとして3つのキーワード「環境適合性」「経済性」「快適性」を打ち立て、直接エアラインへ販売活動を進めてきました。2017年4月現在、基本合意をいただいている20機を含めると累計受注数は447機になっています。当初の計画では、2013年後期に初号機を納入する予定でしたが、現在は3年後の2020年半ばの納入を目指し、外国人の専門家を大幅に雇い入れるなどの対策をしながら、必ずやり遂げると決心して取り組んでいるところです。 部品調達や契約交渉、カスタマーサポートを含め、製造から販売までの各過程において専門的な知識やスキルを持った人材は必要不可欠です。しかし、50年の空白がある日本の航空機産業は、エンジニアだけを見ても日本人の人材だけで賄うことは困難です。事実、三菱航空機株式会社の全従業員の内、300名以上が外国人エンジニアです。ライバルのブラジルでは、航空機メーカーと政府が共同でエンジニア養成プログラムを用意し、選抜した人材に奨学金を出して大学で学んでもらってから採用することで、優秀なエンジニアを確保しています。また、アメリカのカンザス州政府は、航空機のエンジニアと労働者を育成する目的で学校を設立し、サービス業に従事するパートタイム労働者を対象に勧誘を行い、入学させて教育することで人材を確保しています。このように、航空機のエンジニアや技能者の育成は世界の潮流です。日本でもそのような取り組みが必要です。そんな中、中部大学に宇宙航空理工学科の開設が予定されていると聞き、とても頼もしく思っています。航空宇宙産業の未来のためにも日本のモノづくりが廃れてはなりません。我々の夢は名古屋をシアトル、トゥルーズと並ぶ航空宇宙産業の世界三大拠点の一つにすることですから、その実現に向けて今後も邁進を続けていきたいと思います。MRJの特長とプログラム進行状況空白の50年を埋める人材の創出江川 豪雄Profile静岡県清水市出身。昭和42年東京大学法学部卒業。同年、三菱重工業(株)入社。同社にて航空機部長、米国現地法人取締役社長、常務取締役兼海外戦略本部長等を歴任し、平成19年に取締役副社長。平成21年に三菱航空機(株)代表取締役社長、平成25年には同社取締役会長。平成27年から現職。三菱重工による零戦製造の伝統を受け継ぎ、世界のリージョナルジェット機市場の拡大を見越して、国産初のジェット旅客機・MRJ開発の指揮を執るとともに、多くの受注実績を上げる。34

元のページ  ../index.html#35

このブックを見る