幸友20
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トしていると感じます。私は、ニューディール政策という経済政策に、人間の姿や人生、生活という歴史の目線をリンクさせて捉えることを目指しています。学生たちにも、専門的な勉強を進めながら、専門外の目を自分なりに養い、視野を広げてほしいと思っています。 これから世界は対立と分裂の時代を歩むのか、安全と協調の時代を目指すのかと考えた時、今の流れはどう見ても対立が強まり、どの国も汲々としていくばかりのようです。世界の覇権を主張する国が続々とその力を誇示し出しています。中国の軍事力強化、北朝鮮の核・ミサイル開発、ロシアもプーチン大統領による強硬な態度が目立ちます。そのような中で、アメリカではトランプ大統領が誕生しました。この状態は、先進国が植民地を求めて世界に乗り出していった19世紀末から20世紀初頭の帝国主義の時代、そして、第一次世界大戦へとつながっていった歴史に非常によく似ています。つまり、現代は危機の時代です。しかし、私たちは豊かさを経験してしまったがゆえに、深刻にならなくても何とかなるのではという深層心理の中の安心感に埋没してしまってはいないでしょうか。 人としての生き方は、危機の時代であればあるほど強く問われます。1930年代のアメリカでも、繁栄の時代から急転直下して景気が大きく落ち込み生活が暗く貧しくなっていく時代に、自分らしい生き方を探し、見つけた人たちが多く活躍しました。生きがいや手応えのある人生を送るために、働く企業の大きさは関係ありません。むしろ、自分の仕事の成果がダイレクトに見えやすい中小企業の方が手応えを感じやすいとも言えます。また、地域に根差した特徴あるモノづくりや販売戦略という独自の魅力も備えています。多くの学生は就職先として大企業に目を向けがちですが、歴史が証明しているように大企業であっても避けられないリスクに気づいてほしいと思います。そして、多くの人が生きがいを持って働いていけるような世の中を目指したいですね。河内信幸先生の この本は、フレデリック・アレンが1931年に出版した処女作であり、アメリカで大ベストセラーになった。扱われている内容は1920年代のアメリカ社会であり、ほんの昨日のことを同時代の社会史として描いたものである。 1920年代のアメリカは経済の大繁栄期であり、株価はうなぎのぼりとなり、巷では断髪や短いスカートのフラッパー娘、自動車やラジオに魅せられた人々があふれ、新聞にはスキャンダルやギャングなどが記事をにぎわした。しかし、こうした華やかなアメリカ社会は、1929年10月24日の暗黒の木曜日(ブラック・サーズディ)に株価が暴落し、1930年代は未曽有の大恐慌へと落ち込んでいった。そして、経済危機が多くの人々の生活と人生を変えてしまい、ついに1930代後半には戦争への足音が高まっていくのである。―厳しい時代の流れを前に、私たちができることはあるのでしょうか。「オンリー・イエスタデイ  ―1920年代・アメリカ」 F・L・アレン著、藤久ミネ訳 筑摩書房、1986年―経済に歴史学の視点を加えて見ることが大切なんですね。27

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