幸友20
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 今回は、健康に深くかかわる医療資格・医療職種についてお話しさせていただきます。 皆さんもご存じのとおり、病院やクリニックは、医療資格者の集まりで、30種くらいの医療資格者が働いています。現在の医療は、ハイテク医療(高度先端医療)と言われ、高度な医療機器も多く扱うため、多くの資格者でチーム医療を展開しています。その中で今回は、臨床工学技士についてお話しします。 臨床工学技士は、チーム医療の一員です。しかし、臨床工学技士という職種の人が、病院・クリニックで仕事をしていることは、あまり知られていません。なぜなら、臨床工学技士の国家資格が誕生してから30年余りと歴史が浅く、医療の世界では新参者だからです。 また、臨床工学技士があまり知られていない理由は、皆さんが体調不良になり病院へ行っても、めったに遭遇しない存在だからです。普段、風邪や腹痛などで病院やクリニックに通院された時、医師・看護師・薬剤師・放射線技師などと遭遇することはありますが、臨床工学技士と遭遇することはありません。病状が重篤化した場合に関わる仕事だからです。病院の中の集中治療室や手術室、透析室などで仕事をしています。 集中治療室とは、よく知られているように生命の危機にある方が入る、特別な医療体制をもった病院内の施設の一種です。呼吸、循環、代謝、その他の重篤な急性機能不全の患者を24時間体制で管理し、より効果的な治療を施すことを目的としています。臨床工学技士は、集中治療室の中で、重篤な急性機能不全となった患者の治療をお手伝いします。 手術室では、多くの外科的手術が行われます。その中でも、心臓手術などでは臨床工学技士は欠くことができない医療職種です。心臓手術の時に、心臓を止めなければいけませんが、心臓が止まると人間は死んでしまいます。そこで心臓を止めている間、医療機器で生命を維持する必要があります。この医療機器を人工心肺装置と言います。この機器は、操作が複雑で、慣れていないと医師でも操作が難しい機器です。以前、東京女子医科大学病院で行われた12歳の女の子の心臓手術の時に、人工心肺装置を医師だけで操作して、死亡事故を起こしてしまいました。人の命を救う医療行為が人の命を奪ってしまった、とても悲しい医療事故です。事故調査委員会からの報告に、この事故は、臨床臨床工学技士は、何をする人か知っていますか?中部大学 生命健康科学部 臨床工学科 教授 武田 明たけだ あきら823

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