幸友20
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 働く人のほとんどが何かしらのストレスを抱えていると言われる現代社会。企業にもより組織的な対策が求められています。西田豊昭准教授の専門分野である組織心理学は、実証的な科学的活動を伴う分野。組織における人間の問題について実際のデータを収集し、その結果を分析しながら仮説を検証しています。「組織におけるストレスマネジメントの第一歩は、いかに正確に個人のストレス反応を測定するかにあります」という西田准教授。しかし、これまでのストレス調査で用いられてきた測定尺度は、精神病院などの臨床現場において患者が示す反応に基づいて作られてきたもの。普通の人が回答すると、質問に対してできるだけ自分を良く見せようとする意識が働き、日常的な場面におけるストレス反応には反応しにくいという欠点がありました。そこで行ったのは、より実際の組織や会社を想定し、職場環境の文脈を追加した項目の作成(図1参照)。そうして実際の企業で測定したところ、従来と比べて識別力が高まり、日常的なストレスの測定が可能になることが明らかになりました。 従業員のメンタルの不調を防ぐことを目的に、2015年12月から「ストレスチェック制度」がスタート。従業員が50人以上の事業所は、年に1回ストレスチェックを実施することが義務付けられました。しかし、制度開始後、最初の1年間の状況を分析したところ、チェック実施後に何らかの職場環境の改善を行った企業はわずか37.0%。集団分析結果を受けた後の職場自体の取り組みが重要であるのに、実際はあまり行われていないのが現状です。「今後は、人間関係、仕事の特性、制度要因、組織風土などの職場環境がどのようにストレスに影響し、どのように個人のストレス反応に影響を及ぼしているかを分析していきたい」と意気込みを語る西田准教授。より詳細な分析を進めることで、その結果が職場環境の改善につながり、ひいては職場の生産性を向上させるような研究の進展に期待が寄せられます。経営情報学部 経営総合学科・経営学科にしだ とよあき       西田 豊昭准教授集団や組織における人間行動を科学的・実証的に研究する。図1 測定尺度に職場環境の文脈を追加した項目例仕事が忙しすぎて、不機嫌で怒りっぽくなることがある。職場の人間関係を考えると、泣きたい気分になることがある。会議中に意見が対立し、感情の起伏が激しくなるときがある。仕事上、人が信じられないと感じることがある。責任の重い仕事を担当していて、誰かに慰めてほしい、支えてほしいと思うことがある。家庭や私生活での悩みがあり、仕事が手につかないことがある。不機嫌で怒りっぽい。泣きたい気分になることがある。感情の起伏が激しい。人が信じられない。誰かに慰めてほしい、支えてほしいと思う。仕事が手につかない。研究テーマ専門分野組織心理学、組織行動論、行動科学人事測定ツール、適性検査の開発、ワークストレスの分析、IRTによる項目分析組織心理学職場環境の改善につながる研究を目指す。職場環境の文脈を組み込み、測定尺度を改善。21

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