幸友20
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7学部と大学院6研究科を擁する総合大学として知的資産を集積する中部大学。さまざまな学問分野を網羅する数多くの研究室から、今回も4つの研究室を訪問しました。産官学連携あるいは事業化等にぜひご活用ください。 前職は、法医学における薬の分析をする傍ら、違法ドラッグが心臓にどのように影響するかを細胞レベルで研究していたという前野善孝教授。現在は本学の食品栄養科学科に所属し、心臓の機能に影響する物質を探索しています。日本人の死因の第二位でもある心臓病。治療方法に心臓移植がありますが、日本での移植件数はそう多くありません。そこで臨床試験で行われているのが、筋肉由来の細胞を心臓の細胞に分化させてシート状にし、肥大や心筋梗塞を起こす心臓に貼り付けるという手法。シートが剥がれずにうまく生着すれば心機能を回復させることができるとして治験が進められています。「その効果を上げる方法を探っている過程で、ある“ペプチド”が作用していることが発見されました。心臓が肥大するように改変したラットに、そのペプチドが分泌するような細胞をつくり貼り付けると肥大を起こさないという結果が、大阪大学の研究グループによって得られたのです」。前野教授は、そのグループとの共同研究としてラットの心臓から細胞を取り出す装置を製作して、その装置を使って単離した細胞にペプチドを暴露する実験を行っています。 しかし、ペプチドがどのような機能を持ち、なぜ心臓の肥大を抑制するのかのメカニズムまではわかっていません。「もしメカニズムを解明できれば、細胞にペプチドが発現するような遺伝子操作をしなくても、たとえば心臓に注射をする薬の開発にもつながるかもしれません」と話す前野教授。また、前野教授の研究の特徴は、成熟したラットの心臓から細胞を単離させて培養するプライマリーカルチャーであることです。「iPS細胞やES細胞とは違い、心臓の細胞そのものを使うことが本来の姿であると考え、その心筋細胞を使ってさまざまな影響を与える物質を探しています」。単離した細胞を培養した肥大モデルを使い、自然界にあるさまざまな食品を暴露したときの変化を見たいと話す前野教授。同じ細胞で一生働き続けるタフな生命力を持つ心筋細胞と、今日も劇的な変化を起こす物質を探すべく粘り強く対峙しています。応用生物学部 食品栄養科学科管理栄養科学専攻まえの      よしたか     前野 善孝教授心筋細胞を用いて、心臓機能へ影響を与える物質を探る。成熟ラットの心臓から単離した心室筋細胞。単離直後の桿状形態で収縮弛緩を示さない。単離した心室筋細胞の培養13日目。単離後、球状形態を呈し、次第に偽足様構造を伴う多角形態に変化(肥大モデル)。自動拍動を観察する。■単離した心筋細胞の変化研究テーマ専門分野解剖生理学、形態機能学心機能に関わる化合物の探求解剖生理学最終目標は心筋細胞に作用する医薬品開発。心臓病予防の 一助となることを目指して。50μm20μm20

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