幸友20
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を拠点に絵を描き続けたのである。このように、ここでは若き美術学校時代、初期のパリ時代、後期パリ時代というように、荻須の画業、画風の変遷を見ることができる。 また、もう一つの見どころは、荻須が使用していたアトリエの復元施設だ。荻須は、パリで3カ所のアトリエを借りていたが、なかでも晩年いちばん長く使用していたモンマルトル近くのアトリエの内部空間を復元している。しかもこのアトリエは、建築の専門家らが現地へ赴き、間取り等の各所サイズを測って忠実に再現したもの。北向きに配置された広い窓、高い天井、そこに置かれたソファやテーブルなどの家具のほか、絵筆やイーゼル、パイプなど、ご遺族から寄贈された荻須愛用の品々が、在りし日の荻須のおもかげをさりげなく感じさせてくれる。 開館当時のコレクションは、荻須本人から寄贈された作品を含む123点だったが、開館から34年を経て、現在では200点を超える作品を所蔵する。そしてこの秋、一年に一度開催する特別展では、油彩、水彩、リトグラフなどほぼ全ての所蔵品が展示される予定だ。 荻須の作品は、石造りの建物や街並みを描いたものが多い。しかもきれいに整備された観光地ではなく、歴史が染み込んだ、人の暮らしの痕跡が表れている建物だ。それは何度も絵の具を塗り重ねて描いた壁に見ることができる。人物を描かずに、建物によって人の暮らしを描き出しているのだ。荻須がこよなく愛したパリ。ただ描いたのは、パリの華やかさではなく、そこで暮らし続ける人々の飾らない生活。暮らしの厳しさ、豊かさだけでなく人々の息づかいまでも伝わってくるようだ。館長 山田 美佐子さん企業様の中には、荻須氏の絵画をお持ちの方もいらっしゃるようです。当館では作品のデータベースを作成しています。皆様に広く見てもらいたいという方は、ぜひ情報をお寄せください。平成29年度特別展荻須高徳展~全コレクションによる~荻須高徳《モンマルトル》1935年、油彩・カンヴァス、稲沢市荻須記念美術館蔵© ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2017 G0971所蔵品約200点を展示し、荻須の画業や作品の魅力を紹介します。油彩画、水彩画、素描、版画、タピスリーなどさまざまな技法による豊かな表現をお楽しみください。〒492-8217 愛知県稲沢市稲沢町前田365番地8TEL.0587-23-3300休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)、祝日の翌日、はだか祭の日http://www.city.inazawa.aichi.jp/museum/稲沢市荻須記念美術館2017年10月28日(土)~12月10日(日)会期中展示替があります前期:10月28日(土)~11月12日(日) 後期:11月14日(火)~12月10日(日)当時の雰囲気を味わえるアトリエ復元施設。美術図書が充実した資料閲覧室。16

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