幸友20
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 天台宗の開祖、最澄が記した「山家学生式」の中に、「一隅を守り、千里を照らす。これ則ち国の宝なり」という言葉があります。私はこの言葉を「一隅を照らす従業員は会社の宝なり」と言い換えて常に自分の中に置き、従業員に説いています。心に留めたのは約10年前、社長に就任した数年後、ある高僧による法話を聞いた時でした。とかく利益優先になりがちな企業人の私は、損得勘定に捉われない仏の教えに興味を惹かれ、肝に銘じなければと思ったことを覚えています。 私どもの主たる事業の清掃管理・設備管理や自動車部品梱包作業は、従業員のやる気が大きく左右する労働集約型の産業です。一人ひとりがルールやマナーを守りきちんと仕事をすることが、会社としてのブランドの確立、安全第一や品質向上につながる一方、手抜きや粗相があればあっという間に信用を失いかねません。「一隅」には、「隅」という言葉が入っていますが、清掃の仕事も「隅々」をきれいにすることです。「一隅を照らす」とは、一人ひとりがきちんと仕事をすること。そして、「会社の宝なり」ということは、仕事をする上でもっとも重要なのは人であり、会社のかけがえのない財産、まさに「人財」であると解釈しています。約1000人の従業員を擁する当社では、働く従業員が主役であり、一人ひとりの総力を大切にしています。つまりトップ一人の一歩の力よりも、1000人の従業員一人ひとりの一歩一歩の総力が大きな力となると考えています。仕事は裏方で脚光を浴びるような華やかさはありません。だからこそ、従業員に少しでもやる気を起こし、誇りを持って仕事をしてもらうことが大切です。 初代社長は昭和12年に会社(現在は大岡技研株式会社)を創り、その後新分野への事業拡大のため、昭和30年に東海地区初の建物管理会社として三清社を設立しました。以来、さまざまな事業(廃棄物処理・物流作業管理・リニューアル・ビル事業)を時流に先んずる発想で展開してきました。これからも重要なことは、変化に対応しながら新しい発想で事業を展開していくこと。もちろん、従業員が会社の宝であることを忘れずに。従業員の一歩一歩の総力が会社を動かす大きな力に。「一隅を照らす従業員は 会社の宝なり」企業人の格言企業のトップが語る人生訓Vol.11大岡 洋三(おおおか ようぞう)氏/昭和22年愛知県名古屋市生まれ。昭和45年早稲田大学第一政治経済学部卒業、同年、伊藤忠商事株式会社入社。昭和53年伊藤忠商事株式会社退社後、株式会社三清社入社。昭和57年取締役就任。昭和59年専務取締役就任。平成14年代表取締役社長就任。平成28年より代表取締役会長。株式会社三清社代表取締役会長さんげがくしょうしきいちぐうすみすみずみ13

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