幸友19
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市原 京都の企業は大きくなっても本社を東京に移そうとしません。経営者に聞くと、京都にいるからいいのだと言います。さまざまな大学との産学連携ができていて、そこにいることが地元を活性化させる。それが結果的に京都ブランドになり、海外展開しても“ほんまもん”の経営ができていると思われるそうです。その土地で確たるものを築くことが大事だということですね。—では、大学と産業界はどのように連携を図ればよいでしょうか。山下 社会全体としてどんな人材が求められているかを明確にしても、それが個々の企業が求める人材像にはそのままでは結びつきません。個々の企業ごとにこんな人材が求められているという具体的な情報を提供できるのは金融機関しかありません。人材供給という視点で企業と大学をつなぐ具体的な仕組みを実現させたいというのが私の考えです。その人材供給源として本学を活用する関係を構築したいと思っています。市原 企業や社会から見て、学生に共通して求めるものは、初歩的ですが基本的なマナーです。お客様と会うときの心得や挨拶、マナーは社会人になる前に習得しておくべきでしょう。またディスカッションを通して共感力や会話力も身につけてほしいですね。その習得には「不言実行館」はいい環境だと思います。山下 その通りですが、本学はもう一つ上の目標を設定したいと思っています。たとえば製造業であれば、工学的な技能と合わせて文化的素養も持ち合わせた学生がほしいといった具体的な要望を教えていただきたいのです。市原 つまり東海エリアにはこんな業種があり、そこの企業が今どのような状況か、課題は何か、また、将来的な事業展開の方向性はこうだから、求めているのはこういう人材ということを伝えることができればいいのかもしれません。経営者の思いを金融機関は理解していますから、そういうことを学生たちに話すことでヒントになるのかもしれませんね。山下 情報の仲介者であり発信者でもある金融機関に、さまざまな企業が将来に向けて必要としている人材を伺って、大学の教育の中にその要望を組み込みたいと思っています。動機づけがはっきりしていない学生は社会人基礎力がなかなか身につきません。社会で活躍するために今これを身につける必要性を大学に持ち込むためには、企業の皆様の指導が必要です。市原 企業と大学との間に金融機関が入り、企業からこんな人材をほしいという声があれば大学へ伝える。場合によっては経営者の思いや業界の将来性などを、ゼミや講義で語っていただく。我々としてはそういう地元の企業がどのような若者を求めているかを中部大学へお伝えして、テーラーメイド教育の参考にしていただくという連携の仕方もありますね。山下 個別の企業との点的な関係に留まらず、構築したいのは面的なネットワークです。地域の人材を地域で育てて、地域で活用する「地育地活」という中部大学発のスローガンを実践する教育体系をつくっていくことで個性的な大学へと成長したいと思っています。「人とは違う個性的な価値観が、 成功を生み出す力になる」地域と生きる企業と大学〜激動の時代に求められる産学連携の人材育成〜特集06

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