幸友19
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る時代ではないということ。本学では「テーラーメイド教育」と言っていますが、学生一人ひとりの個性や意欲に合った教育を始めています。企業が市場調査をした上で製品生産を始められるように、大学も注文教育の時代だと思っています。—金融機関として地域を育てる取り組みについて教えてください。市原 入社後、出世のためのキャリアデザインはありますが、地域や企業の個性を身につけていこうと思うと、地元の金融機関として企業や地域のためにどれだけ貢献したかも評価に入れなければなりません。お客様に喜ばれることが自分の喜びと感じられるような評価体系や育成方法が必要です。そこで東濃地区の店舗の職員には、従来の金融知識と併せて地場産業についても勉強させています。また実学という視点では、社長や経理担当者との情報交換だけでなく、工場や売り場を見せていただきお客様を理解するようにしています。ひと昔前、融資は担保と保証に依存していましたが、これから個性や将来性を育てるには、我々も教育の仕方を変えていかなくてはなりません。山下 アドバイザーやコンサルタントと言えますね。市原 何か困りごとがあったときに最初に声をかけてもらえるファーストコールバンクになりなさいと伝えています。大学に建学の精神があるように、我々は「地元と共にあり、共に栄える」が経営理念ですから、これを絶えず言っています。そのもとで商品やサービスの開発において、ほかにはない個性をどう出すか。そのときには先も見なくてはなりません。山下 刹那的な満足度を満たすための方針では、激動の時代においては意味を成しません。もっと長い目で見ることが大切ではないでしょうか。教育もそうです。教育は学生と教員がお互いに作り上げるものという価値観を持たなければ本当の教育ができないと思っています。地域への貢献も短時間ではできませんよね。市原 そうです。私も今、どういう経営スタイルが望ましいかを考え、公益資本主義の考え方に注目しています。上場企業は四半期ごとの決算により、経営の視点が短期的になりがちですが、本来、日本的な経営の良さはロングタームで、三方よしの精神です。もちろん改善も必要ですので、絶えず先を見て製品や事務の改善を意識している会社を評価します。また近年では、経営層と従業員との給与の格差が問題になっていますが、その所得の分配を不公平感なく考えることも公益資本主義です。これこそが日本に合うと思っており、そこへ個性である地域性をどう加味していくかを考えています。幸い我々は上場している銀行と比べ、よりじっくり腰を据えて地域の産業の育成や人材育成ができることが強みだと思っています。山下 人間は自分の足で歩ける範囲内(四里四方内)で育ったものを食べ、生活するのが健康的とする「身土不二」という言葉がありますが、今、経済や生活など、あらゆるものにおいてグローバリゼーションが進んでいます。しかし、自身を活かすために立脚すべき基盤を持たなければなりません。[幸友会会員企業] 東濃信用金庫岐阜県に41店舗、愛知県に18店舗を持つ岐阜県内第2位の規模を誇る信用金庫。地域の皆さまから“とうしん”の愛称で親しまれ、金融サービスはもとより、文化・環境・教育・福祉といった幅広い分野で、地域社会の活性化・持続的発展に取り組んでいる。「地場産業の進化と文化の存在が 個性を育て、人を育てる」05

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