幸友19
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今回は高電圧実験室、国際GISセンター、機械工学実習室をピックアップ。目の前で繰り広げられる実験や加工の様子に、見学者からは感嘆の声が湧きあがり、多くの質問が飛び交いました。中部大学フェア2016 —人づくり・モノづくり・コトづくり・夢づくり—用して食品や医薬品、化成品などさまざまなものをつくりだしています。大学と産業が協力し成果を出している例も多々あり、近年実用化された例を紹介されました。その中で、清水氏が進めた取り組みが『微生物から食用油をつくる研究』です。清水氏いわく「目指したのは、植物がつくれない油」であり、脂肪酸の生合成経路や生物の種類でつくられる脂肪酸が異なることなどを説明し、動物のみが生成する『アラキドン酸』に着目した経緯を紹介されました。アラキドン酸は細胞膜をつくるために必須の脂肪酸ですが、年齢が若い場合は体内で変換できても、赤ちゃんや高齢だと効率よく変換できないといいます。そこで発見したのが、『モルティエレラ・アルピナ』という毛カビの一種です。菌体乾燥重量1グラム当たり約600ミリグラムの油をつくり、この脂肪酸の6~7割がアラキドン酸です。このアラキドン酸が運動能力や知的能力を高めるといった実験結果が出ており、現在日本を含めた世界中でこのカビがつくった油を添加した粉ミルクが販売されているとのこと。これもまた、一株のカビを探し出したことで新たな産業が生まれた例であり、ほかに微生物の酵素を使った衣料洗剤マーケットの拡大についても紹介されました。 そして清水氏はバイオテクノロジーの今後として、地球規模の取り組みにも言及。水の使用量やBOD、副生塩、有機溶剤の使用を50%以上削減したという微生物工場の実例のほか、限りある資源を賢く使う手段の一つとして微生物などを培養して石油をつくるという発想があると話されました。「私たちの仕事は、おそらく“例外”を探すこと。バイオテクノロジーはブラックボックスのようなものでITやAIのようにスピーディにはいかないが、確立したら永く活用し続けることができてエコなのです」と語り、微生物の隠れた能力を探し出すプロセスや大切な心構えを伝授。微生物への愛があふれたユニークな講演に、会場からは大きな拍手が送られました。施設見学会高電圧実験室では、雷を再現した大規模な実験を実施。高電圧実験室実際にドローンを飛ばし、地理情報システム(GIS)のデータを収集。国際GISセンター数値制御(NC)旋盤を使った高精度な加工技術などを紹介。機械工学実習室40

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