幸友19
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 岐阜県の中南部に位置する「八百津町」。ここは“命のビザ”で多くのユダヤ人を救ったことで知られる外交官 杉原千畝氏や、数々のヒット作を持つ作家 池井戸潤氏のゆかりの地でもある。八百津町は面積の約8割が山林であり、木曽川と飛騨川が流れる自然豊かな町だ。町の東西を流れる木曽川は、かつて木曽の山から切り出した木材を搬出するための重要な水路だったという。そして、この豊かな水量を発電に利用しようと1911(明治44)年に竣工したのが「八百津発電所」であった。その歴史を紐解くため、1998(平成10)年4月に資料館として開館した「旧八百津発電所資料館」を訪れた。 木曽川沿いの緑に囲まれた場所に現れたのは、ひっそりと佇む白亜の建物。壁から飛び出した巨大な碍子とは裏腹に、アーチ型の窓や細かな装飾が目を引く。入口をくぐると、資料館案内役の安藤さんが笑顔で迎え入れてくれた。「建物はイギリス積みのレンガ造りで外装はモルタル塗り、内装は漆喰仕上げです。日本人技術者が設計したもので、在来の土木技術を駆使して建設されました。漆喰の剥がれからレンガ積みの様子が分かると思います」。 さらに奥へ進むと、軒高12mの広々とした空間に鎮座する3組の発電機が目に飛び込んできた。「ここは発電棟。天井が高いのは放熱性を考慮したためです。水車に発電機を直結した発電装置が3組ありますが、当時は予備機を含めた計4組がありました。1・2号機は当時のままの姿。3号機は茨城県筑波で開催された国際科学技術博覧会に明治・大正・昭和の時代を歩んだ木曽川水系初の本格発電所。4旧八百津発電所資料館岐阜県加茂郡八百津町八百津1770番地1TEL(0574)43-3687入館料/一般300円、小中学生100円開館時間/9:00~16:00(入館は15:30まで)     ※冬季(1~3月)は10:00より開館休館日/月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始がいし岐阜県加茂郡八百津町旧八百津発電所資料館水車は当初、米国モルガン・スミス社製だったが、破裂事故を起こしたため、電業者製フランシス水車に変更。発電機は米国ゼネラル・エレクトリック社製(最大出力7,500kw)で、水車の取替とともに芝浦製作所がコイルを巻き替え、9,600kwに引き上げられた。1階には、かつてこの地域の暮らしを支えていた「木曽川筏」を再現したスペースも。木曽ヒノキなどの木材は、藤づるで固く結びつけて筏に組み、筏を漕ぐ乗り手2人が桑名や名古屋へと運んだという。31

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