幸友19
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 認知症は、“認知障害により社会生活が困難となった状態”と定義されています。2013年に報告された厚生労働省研究班の調査によると、認知症の全国有病率は15%と高く、65歳以上での有病者数は462万人と推定されています。高齢になればなるほど有病率は飛躍的に上昇します。日本の高齢化社会では、2025年には65歳以上の5人に1人は認知症に罹患すると予想されています。 認知症と一言でいっても、実は様々な種類の認知症が知られています。最も頻度の高い認知症はアルツハイマー型認知症/アルツハイマー病です。もの忘れから気づくことが多く、進行とともに時間や場所、認知機能が全般的に障害されていきます。次に多いのは、レビー小体型認知症です。この疾患は、初期は認知機能や注意の変動が目立ち、動物や人などの幻視が現れるのが特徴です。他に、脳血管障害が基になって発症する血管性認知症、性格や行動の異常で始まる前頭側頭型認知症などがあります。 認知症の前段階の状態を軽度認知障害(mild cognitive impairment;MCI)と言います。日本神経学会の『認知症疾患治療ガイドライン』では、MCIとは“認知症とも知的に正常とも言えない中間状態”と定義されています。言い換えれば、脳の認知機能に何らかの低下がみられますが日常生活には差し支えがなく介護を必要としていない状態です。MCIの2、3割は3〜5年以内にアルツハイマー型認知症に進展します。近年は、アミロイドβ蛋白の蓄積が既に始まるMCIあるいはMCI以前の無症状の超早期段階から治療を開始することが重要視され、国内外で臨床研究や治験が行われています。 認知症の治療には薬物療法と非薬物療法があります。治療薬は、認知症そのものに対する抗認知症薬と認知症に付随しやすい不眠、うつ、幻覚、異常行動などの周辺症状としての行動・心理症状(BPSD)を低減させる薬物に大別できます。抗認知症薬には、記憶障害など認知症の中核症状に対してその改善や悪化を遅らせるための症状改善薬と疾患の病因を制御する根本的治療薬(疾患修飾薬)がありますが、根本的治療薬は未だ市場化されてはいません。現在日認知症は予防できるか?生命健康科学部 作業療法学科 教授 長谷川 康博はせがわ やすひろ7認知症と軽度認知障害(MCI)認知症の薬物療法23

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