幸友19
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中部大学研究支援課では、企業の皆様のニーズに応じて、関連分野の研究者を紹介しています。共同研究や委託研究など、研究支援の相談窓口としてお気軽にご相談ください。[幸友会事務局]0568-51-4852(直通)幸友会事務局を介したご相談も承っております。研究支援課 1981年以降、日本人の死因第一位となっている「癌」。現在行われている主な治療方法には、外科的手術による切除、化学療法剤(抗癌剤)の投与、放射線治療があります。化学療法剤の投与は副作用が強く、患者さんの体にかかる負担も大きいため、少しでも負担を軽減する治療についての研究が進められてきました。古川教授は癌化した細胞表面に出てくる分子に着目。ホクロの癌と呼ばれるメラノーマや小児癌の一つの神経芽腫などの細胞表面にGD3、GD2と呼ばれる酸性の糖脂質が出てくることに着目し、それに伴う細胞の性質の変化と機能に関する研究を続けてきました。最近では、これらの酸性糖脂質をつくる酵素遺伝子が、慢性炎症の時に細胞から分泌される因子(炎症性サイトカイン)によって、正常細胞のメラノサイトでも誘導されることを見つけました。「癌化した細胞表面に酸性糖脂質GD3、GD2が発現すると、細胞の増殖スピードが上がり、細胞の接着も良くなることが分かってきました。それらの分子に対する抗体医薬品が開発できれば、正常細胞を傷つけることなく、癌細胞だけを特異的に攻撃することができるため、副作用を軽減することが可能です」。アメリカでは既に酸性糖脂質GD2に対する抗体医薬品が認可されており、日本でも認可に向けた研究が進んでいます。 古川教授が研究を続ける糖脂質は、細胞膜表面の脂質に複数の糖が鎖のように連なった糖鎖が結合したものです。糖鎖は細胞表面に突き出たように存在し、構成している糖の種類がその細胞の機能や役割を決めています。「私たちのABO式血液型も糖鎖によって決まっています。糖をつける酵素をコードしている遺伝子の僅かな変異が、赤血球表面の脂質やタンパク質に結合する糖鎖の末端に違いをもたらし、血液型を分類しているのです」。細胞膜を構成する分子には、まだ多くの謎が隠されていそうです。ここ数年の技術革新によって、生きた細胞表面の1分子を顕微鏡でリアルタイムに観察する新しい観察法が生まれています。「今まで知りえなかった細胞膜のダイナミックな動きが明らかにされれば、新しい概念やアイデアが生まれ、研究も大きく前進すると考えています」。古川教授の新たな発見が、癌治療を変える日も近いのかもしれません。副作用の少ない医薬品を目指して。技術革新がもたらす新たな可能性。生命健康科学部 生命医科学科 古川 圭子教授ふるかわ     けいこ細胞膜を分子レベルで解析し、新しい癌治療を考える。生化学0568-51-4740(直通)研究テーマ専門分野生化学、腫瘍学癌性形質における酸性スフィンゴ糖脂質の役割とその分子メカニズム、酸性スフィンゴ糖脂質の生物学的機能の解析■癌細胞における糖鎖異常細胞の癌化により糖鎖伸長の過程に欠陥が生じ、糖鎖の伸長停止が起ることがある。その結果、未熟型糖鎖の蓄積や正常細胞では発現しない異常糖鎖が発現する。これを癌関連糖鎖、または癌関連糖鎖抗原という。22

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