幸友19
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 地球上の生物は、いろいろな生物と相利共生関係を構築しながら絶妙なバランスをとって生活しています。この「寄生・共生関係」を、線虫を用いて研究しているのが長谷川准教授です。「寄生虫の中には、宿主を死に至らしめるものもいれば、逆にいい影響を与えるものもいる。そういった関係を進化の過程でどのように構築してきたのかを調べています」。そう話す長谷川准教授が研究対象としているのはゴキブリの腸内に宿る寄生虫。人間が持続的に幸せな暮らしを送ることを目的としている中、なぜゴキブリなのでしょう。その理由は、全生物における共通のルールにあります。実は、人間もゴキブリもハエも線虫も同じルールのもとで生きているとのこと。つまり、線虫の寿命延長やハエの認知症予防ができれば、いずれはマウスへ、そして人間にも応用ができると言います。「2億5千万年前から生きながらえるゴキブリはまさに生きた化石。そんなゴキブリの体内に宿る寄生虫がもしマイナス要素であれば、進化の過程でとっくに排除してきたはず。ならば、なぜ寄生虫を自身の体に保持することを許してきたのでしょうか。その謎を明らかにしています」。 ゴキブリを研究対象にした理由はもう一つ、先生の研究室に所属する学生の「ゴキブリはペット」という一言にありました。今その学生は大学院生になり、日本学術振興会から研究費の支給を受けながら一緒に研究を行っています。長谷川准教授いわく「研究の醍醐味は誰もしていないことに挑戦する新規性」と話すように、ゴキブリの研究者は世界的にもまだ少ないとのこと。ですが海外の研究者とともに研究するほど研究室はグローバルです。「研究を通して学ぶことは実に多い。単に気持ち悪いと排除するのではなく、本質を見る姿勢も身に付けてほしい」と、長谷川研究室にとってゴキブリは、研究ツールであり教育ツール。今後は害虫駆除のニーズに応えるため、ペストコントロール産業にも貢献したいとのこと。学生との出会いから始まったゴキブリの研究の可能性は今も広がっています。長い進化の歴史を持つ生物を通して人間の疾病予防を目指す。本質を見て良さを引き出す姿勢も養ってほしい。応用生物学部 環境生物科学科 長谷川 浩一准教授はせがわ      こういち生物間の寄生・共生関係を明らかにして環境適応性の進化を探る。楽しそうに研究する姿が印象的だった研究室メンバーの皆さん。応用昆虫学研究テーマ専門分野応用昆虫学、線虫学、遺伝学寄生・共生といった生物間相互関係に関する研究、動物の環境適応性に関する研究、寿命・老化の基礎および応用研究21

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