幸友19
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7学部と大学院6研究科を擁する総合大学として知的資産を集積する中部大学。さまざまな学問分野を網羅する数多くの研究室から、今回も4つの研究室を訪問しました。産官学連携あるいは事業化等にぜひご活用ください。 子どもたちのいじめについて長年研究されてきた三島教授。少人数の仲良しグループ内で起こるいじめをはじめ、現在はLINEなどのSNSによる“ネットいじめ”に着目し、子どもたちを守る手立ての開発に尽力されています。「中高生の間で起こりがちなのは、曖昧な文章で相手に誤解を与えてしまうパターン。文字だけでは送り手の意図と受け手の捉え方に相違が生じやすく、そこからいじめに発展するケースが多く見られます」。そのため、テキストを正確に打つことがネットいじめをなくすために有効だと三島教授は提唱します。「スマホの使用を禁止したり時間を制限する方法もありますが、それよりも良い使い方を広めたいんです。文字のコミュニケーションがいかに難しいか、子ども自身が気づき、考える場をつくりたい」と、携帯電話を取り扱うKDDI株式会社、KDDI研究所とともに実践的なプロジェクトを進めています。 プロジェクトの一つが、中高生対象の「スマートフォンを利用した防災教育」です。今年2月に実施した兵庫県たつの市立龍野東中学校の活動では「文字入力の理解」、「ネットコミュニケーションの理解」、「対面とネットのコミュニケーションの理解」、「防災訓練」の全4回の授業を実施。防災訓練では4人1チームに分かれ、地域で災害が発生したという想定で、防災マップ上の安全な場所へ避難する図上演習を行いました。スマホを全員に貸し出し、各チームに与えられた災害情報をチャットアプリで共有するのですが、単純に『橋が崩れた』ではなく、『○○付近の○○橋が崩れた』と明確にしなければトラブルの原因になる可能性があります。「防災は助け合うこと。命を大事にし、相手のことを思いやるというのは、まさに“いじめの裏側”です。また災害時には正確な情報伝達が命を救うため、受け手を意識しながら発信する重要性を学べます」。ネットいじめ対策の枠を越え、多くの人命を救う地域環境づくりに貢献する三島教授の取り組み。今後、全国へと活動の場が広がることが期待されます。大切なのは、受け手に誤解を与えない文字のコミュニケーション。防災をテーマにした実践授業で、受け手の立場で考える力を養う。現代教育学部 児童教育学科 三島 浩路教授 みしま こうじ人命救助のツール、いじめの原因。使い方で変わるスマートフォンの光と影。龍野東中学校の授業の様子。他チームと情報交換しながら、避難ルートを模索。社会心理学研究テーマ専門分野社会心理学、臨床心理学、教育心理学友人関係における排他性・親密性20

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