幸友19
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研究室訪問 地球温暖化や気候変動、地震など、大規模な環境変化や災害へのリスク対策が政治的な課題とされるようになりました。これらの複合的な問題に対処するには、数字やテキストによる従来の情報分析から脱却し、データを集積して事象の全体像を把握・検討できる新しいアプローチが必要です。福井教授は、地球上のリアルタイムデータを多次元・多解像度で可視化する情報プラットフォーム、デジタルアースを構築し、社会システムに実装する研究を進めています。「デジタルアースは、GIS(地理情報システム)で地図上にデータを重ね合わせてつくるサイバースペース上の地球です。衛星からの高解像度画像、センサーやカメラから収集した世界各地のデータ、携帯電話の端末から得られる位置情報などのビッグデータとリンクし忠実に再現しています」。現状はもちろんアーカイブ情報も収集でき、任意エリアの状況や数値をビジュアルとして俯瞰することができます。 デジタルアースの構築は、課題解決に向けたシミュレーションや緊急時の意思決定・合意形成に活用することを前提に進められています。福井教授は、福島第一原子力発電所事故発生時に放射性物質の拡散予想データが住民に届かず、避難に生かすことができなかった例を挙げ、「デジタルアースは、災害などの有事にサイバースペース上で意思決定し、現実世界を先導するコミュニケーションプラットフォームとしての役割を期待されています」と、今後の展開を見つめます。中部大学を防災ネットワーク拠点とする構想もあります。「国際GISセンターでは、収集した世界中のデータを自在に操作できる15面のマルチディスプレイや電子黒板を備え、リアルタイム情報を統括できる体制を整えました。非常時には自家発電でき、行政や専門家が協議できるスペースを確保しています。名古屋空港を利用した国際災害支援情報基地構想プロジェクトも進行中です」。高度情報社会の知の統合、デジタルアースが危機管理の共同実験室として公の意思決定に活用される日はそう遠くはなさそうです。多次元・多解像度で世界を捉えるデジタルアース。災害時のコミュニケーションプラットフォームに。福井 弘道教授中部高等学術研究所長、国際GISセンター長、知の統合基盤デジタルアース研究センター長ふくい ひろみち地球のリアルタイム情報を可視化し、問題解決に向けた意思決定を支援。世界中から収集した情報を可視化できるマルチディスプレイ。空間情報科学シーズ紹介研究テーマ専門分野地球環境学、空間情報科学Digital Earthの応用研究、持続可能性科学19

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