幸友19
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を比べて見るのも面白い。さらに常時1500点の盃を展示するこの展示室では、「兵隊盃」と呼ばれる無事に除隊したことを記念して作られた盃や、「可盃」と呼ばれる遊び盃など、珍しい盃の数々と出会うことができる。2階の展示スぺース「巨匠館」では、美濃ゆかりの人間国宝・巨匠たちの陶芸作品約40点余りが展示されており、盃とはまた違う趣の美濃焼を堪能できる。 さらに、合わせて見ておきたいのが美術館から徒歩約4分の場所にある「幸兵衛窯」だ。本館、古陶磁資料館、工芸館の3つのエリアで構成されており、約200年前の古民家を移築した建物は、古陶磁資料館として人間国宝・加藤卓男氏のペルシャ陶器研究の資料などを公開している。奥に進むと、今でも年に数回、作品が焼成されるという半地上式の穴窯が目を引く。夜に薪をくべる様子はとても幻想的で、運がよければ、熱いまま窯から出して急冷させる「引き出し黒」と呼ばれる技法を目にすることができるそうだ。また工芸館では、現在の当主、七代加藤幸兵衛氏の作品をはじめ、次代を担う加藤亮太郎氏の作品も展示され、ゆったりと鑑賞できる空間になっている。 市之倉の産業観光の拠点となるべく建てられた市之倉さかづき美術館は、ただ作品を見るだけでなく、ミュージアムショップでは地元陶芸作家の作品を購入でき、隣接する作陶館では作陶体験もできる。ぜひ時間に余裕を持って出かけたい。大量生産により安価に器が手に入る時代、また、お酒を飲むことが暮らしの一部になっている現代社会、盃でお酒を飲む機会は決して多くない。でも、懐かしい友との再会を祝して、あるいはビジネスの成功を願い、時々訪れる乾杯の場面を通して盃に思いを馳せてみるのもいいだろう。酒器にこだわり、その酒器を肴にお酒を飲んでみたくなる、そんな気持ちが芽生える場所だ。館長 加藤 幸兵衛さん神事に不可欠な盃は、人間の祈りや願望と深くつながる大切な道具です。人生の節目で行うさまざまな儀式で珍重され愛でられてきたその盃の魅力を多くの方に発見していただければ幸いです。市之倉さかづき美術館〒507-0814 岐阜県多治見市市之倉町6-30-1TEL.0572-24-5911(火曜日休館)http://www.sakazuki.or.jp/幸兵衛窯2015年にフランスの観光名所ガイド「ミシュラングリーンガイドジャポン」で、2つ星に認定されました。べくはいこうべえがま14

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