幸友18
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来に向けた手元資金の積極的投資、産業の新陳代謝やイノベーション推進による「日本の『稼ぐ力』の取り戻し」を。2本目の柱には、女性の就業への障壁を取り除き、男性を含めた働き方の変更と正規社員になりたい意欲のある非正規社員・高齢者・外国人労働者の戦力化についても考慮した、「担い手を生み出す~女性の活躍促進と働き方改革」。3本目の柱には、「新たな成長エンジンと地域の支え手となる産業の育成」を据え、昨年からいくつかの分野を育成しようと名指しで動いています。主なところでは、農協改革による高品質で味の良い農産物の輸出倍増を農林水産分野で始めました。また今後、日本の医療・介護コストが上がっていくもとで、健康産業の活性化と質の高いヘルスケアサービスの提供が望まれます。20年後にはアジア諸国も急速な高齢化に突入することを考えると、今のうちに高齢化社会の中で医療・介護・サービスを輸出産業に育てることができれば、経済効果の全国波及もしくは地方圏の経済活性化の有効な手段となるはずです。さらに、2015年の成長戦略改訂では観光分野に焦点をあてます。昨年の外国人観光客は年間1400万人を超え、前年比30%増となっています。政府は2020年までに、年間2000万人の外国人観光客を日本へ呼び込みたいとしていますが、この調子でいけば2020年を待たずに目標達成も夢ではありません。もっと知恵を絞れば日本の稼ぐ力の一つとして、いくらでも成長する可能性があると考えています。“おもてなし”に象徴される日本の素晴らしさを伝える観光は地域活性化の大きな要素です。しかしながら、依然として東京をはじめとする都市部への人・物・金の一極集中が大きな課題として残っており、その中でも人の流出を防ぐ手立てが地方圏でまだできていないのが現状です。 政府は2020年度に、社会保障や公共事業などに必要な政策経費を新たな借金に頼らず税収でどのくらい賄っているかを示す「基礎的財政収支」の黒字化を目標にしていますが、9兆円強の穴が空いています。穴埋めが安倍政権にとって今年最大の課題と言っても過言ではありません。社会保障支出に手を付けない限り、財政赤字の縮小は容易ではないため、社会保障改革は必須です。だからといって、高齢化社会へと進んでいく日本の社会保障支出が簡単に減るわけではないようで、社会保障給付費の見通し予測によると、団塊の世代が後期高齢者となる2025年度あたりから医療・介護費用が大きく増加するとされています。全てを保険でカバーした場合、消費税や保険料、医療・介護費用の自己負担額を引き上げざるをえません。日本は医療・介護保険があまりにも整い過ぎているため、医療・介護であれば何でも保険でカバーしようとしますが、ある一定金額以上は保険外でカバーするなどの見直しや、公的医療・介護保険の給付対象サービスをあまり増やさないことも一つの手段です。その分、医療サービスを増やして民間事業者の力でカバーすれば、医療産業そのものを大きくすると同時に医療・介護制度の立て直しにもつながるのではないでしょうか。その他の公的事業分野においても民間の知恵や活力を借りながら立て直しを図ってみてはどうでしょうか。国や地方にある莫大な公的資産をうまく民間に開放していくことで、民間ビジネスに相当数つながるため、経済活性化と財政健全化がうまく両立して改善できることが考えられます。現状の政府事業を見直し、官民連携による財政健全化に向けたビジョンの設計がこれからの日本の鍵になってくると思います。財政健全化はアベノミクスのもう一つの柱高橋 進Profile1953年生まれ、東京都出身。一橋大学経済学部卒業。住友銀行(現:三井住友銀行)に入行。ロンドン駐在などを経て、1990年に㈱日本総合研究所調査部主任研究員の職に着任。2005年より、民間からは3人目の登用となる内閣府政策統括官(経済財政分析担当)に就任。その間、日本の政策に関わるさまざまな委員会を担当し、2013年1月から安倍内閣経済財政諮問会議議員として国政運営に携わる。定期的に執筆活動も行うほか、テレビ東京系「ワールドビジネスサテライト」をはじめとするテレビ番組にも活躍の場を広げ、これからの日本経済の動向を鋭く解説している。38

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