幸友18
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試みと言えます。全国に折衷様式の建物はありますが、当時の素材でそのまま残している建物は珍しいと思います」。確かに、軒反りの屋根や装飾の入った桟唐戸といった中国様式の特徴に、床や天井が板張りという日本様式の特徴が相まっているのが見てとれる。また、観音堂に安置されているご本尊、聖観世音菩薩も県の重要文化財に指定されている。ただ、そこでひときわ目を引くのが観音様を囲う岩窟式の厨子だ。この厳かな厨子が、観音様の存在を際立たせている。厨子は、土岐川の流木を組み合わせて漆喰で固めたもので、その数は煩悩の数108つという言い伝えがある。修行により煩悩を取り除いていけば、清らかな心が現れるということを表しているそうだ。 永保寺の特徴として、夢窓国師が手掛けたという庭をあげる人も多い。ただ、その庭は単に美しいだけではない。池に架けられた橋にも仏教的な意味合いが込められているという。「池の手前から観音堂の正面へ向かって橋を渡ることが、迷いの世界から悟りの世界へ到達するということ。つまり、橋自体を仏教にたとえているのです」。もちろん一般参拝者も渡ることができるが、なぜこの位置に橋があるのか、なぜこの形なのか、なぜ仏様はこのような表情なのか、話を聞かなければ気付かないことが多いかもしれない。しかし、毎年3月15日の御開帳の日には、お坊さんからの説明を聞きながら各所を見て回ることができる。「建物をただ見るのではなく、建物を見て昔の人の偉大さに思いを馳せ心意気を学ぶことも大切です。建物はいつか壊れてしまいますからね」。修行僧の方の言葉を噛みしめながら、もう一つの国宝、開山堂へ向かった。 池の周りに植えられたモミジ。存在感あふれる樹齢700年といわれるイチョウの木。秋深し頃はいかばかりかと想像する。3月まで待てない方は、まず紅葉の季節に訪れてみてもよいかもしれない。「臥龍池(がりょうち)」に架けられた「無際橋(むさいきょう)」。左の梵音巌(ぼんのんがん)上の六角堂には千体地蔵が祀られている。紅葉の見ごろは11月中下旬。観音堂の内部。須弥壇上(しゅみだんじょう)の岩窟式厨子に祀られているのが、県重要文化財の聖観世音菩薩坐像。夢窓国師が直接建てたものとして唯一現存している建物「観音堂」。屋根は檜皮葺で30年に一度葺き替えを行う。屋根を葺く姿はまさに職人技だという。観音堂の扉、桟唐戸の花狭間(はなざま)。軒下の波模様も中国様式の特徴。永保寺の初代住職、仏徳禅師が祀られている開山堂。1352年、足利尊氏により建立と伝わる。建物が国宝に、仏像が県の重要文化財に指定されている。建物は後世の権現造の原型となる様式。のきぞからとさんしょうかんぜおんぼさつ32

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