幸友18
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 岐阜県多治見市内を流れる土岐川沿いに佇む禅宗の寺院。鎌倉時代に建てられたというこの禅寺の正式名称は、「臨済宗南禅寺派 虎渓山永保寺」。今から約700年前の1313年、夢窓国師によって開創され、仏徳禅師を開山として創建された寺である。臨済宗を全国に広め、高僧として有名であった夢窓国師が、この地で修行し、そこへ地元の人々が集まり一緒に修行するようになったことが始まりだといわれている。まずは朝夕の勤行や法要を行うための広間、方丈を修行僧の方に案内していただいた。 「一般的には本堂と言いますが、永保寺では、ご本尊の観音様が祀られている観音堂を本殿と言うため、ここは方丈と呼んでいます」。2003年の火事で焼失したが、市民を中心とした募金によって以前と同じ姿で2011年に再建。内部は、真新しい木によって明るい印象を受けた。ここに安置されている釈迦三尊像は、仏師の江里康慧氏と人間国宝で截金師、故 江里佐代子氏の夫婦による合作だという。細く切り分けた金箔で模様を描く截金という技法で飾られた仏像は実に見事だ。「この新しいお釈迦様と、700年前の観音堂の観音様を対比して見ても面白いかもしれません」。 そうして次に足を運んだのは国宝の観音堂だ。先の方丈とは違う深みを感じる。夢窓国師が訪れた翌年の1314年に建立されたもので、その特徴的な点は唐様と和様の折衷様式にある。「中国の文化や建築技法が伝わっていましたが、それを部分的に取り入れた先進的な国宝を巡り、古の時代に思いを馳せ禅の心に触れる。虎渓山の名称は、景色が仏教の聖地、中国の廬山の麓の地、虎渓に似ていることによる。上部の写真は方丈内部と釈迦三尊のお釈迦様。3虎渓山 永保寺http://www.kokei.or.jp/岐阜県多治見市虎渓山町1-40TEL.(0572)22-0351むそうこくしこうけいきりかねえりぶっとくぜんじ虎渓山 永保寺岐阜県多治見市31

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