幸友18
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そして、生活不活発病になった人たちを生活不活発者と言います。一旦、生活不活発病がおきると、歩きにくくなったり、疲れやすくなったりして、さらに動かなくなるという悪循環が繰り返され、最終的に寝たきり(学術的には廃用性症候群という)に移行していきます。 生活不活発病の状態は、高齢者だけに起こるということではなく、生活の場において動かなくなった状態あるいは動けない状態に陥った場合には、だれにでも起こりうる可能性があります。ある友人が私に話したことですが、子どもが大きくなり、家事が減ったため動かなくなったそうです。私自身も年齢とともに、活動時間が減って休む時間が増えています。着実に生活不活発者に近づいています。生活不活発病の提唱者である大川弥生先生は、生活不活発病の予防や回復のためには「生活を活発にすること」つまり「生活を楽しみ、社会に参加し、生きがいのある充実した生活をおくることが大事である」と述べています。このことは、「生活の質」(クオリティオブライフ)の向上そのものと言えます。生活不活発病は、「毎日の生活のありよう」と直接関係が深い病気です。日常生活を活発に過ごしていること自体が、健康づくりを行っていることとイコールであると言えます。 日常生活を活発に過ごすためのキーワードが「ソーシャル・キャピタル(Social Capital)」です。これは、人と人のつながりを通じて何らかの利益や成果を得ることができるという社会組織の特徴のことを言います。住む人々同士の信頼関係がある地域とそうではない地域とを比べると、信頼関係のある地域の方が身体活動量が高いという研究成果があります。東日本大震災時には、人々がお互いに励まし合い、多くのボランティアの支援活動、そして、「(家族の)絆」の大切さがあらためて見直されました。この絆は、まさにソーシャルキャピタルです。東日本大震災で問題となった生活不活発病に対する1つの対策として、「絆」が働いていたのではないでしょうか。 現代社会は運動習慣が増えずに、メタボリックシンドローム、ロコモティブシンドローム、生活不活発病に陥る危険性を孕んでいます。運動は簡単に取り組めない負担の大きい難しい習慣であるとしても、お互いの絆やつながりをもち、サポートしてもらいながらすすめられたら運動習慣が身につき、日常生活を活発に過ごすことができるのではないかと考えています。健康づくりには、運動や身体活動量の増加が欠かせませんが、最も基本的なことは活発で生きがいのある日常生活を過ごすことです。このような生活を過ごすためには、地域社会で他の人とつながりをもってお互いにサポートし合うことが必要です。24

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