幸友18
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 わが国の健康づくり対策は、1978年(昭和53年)「国民一人一人が自分の健康は自分で守る」ことを基本として本格的な取り組みが始まり、主に「栄養」「運動」「休養」の3本柱で具体的に推進されてきました。当時、私が保健所に勤務していた頃は、脳血管障害、特に脳出血が死因の一位を占めていましたので、「減塩指導」を中心とした栄養指導を行っていました。そして、「週に3回以上20〜30分くらい少し速めに歩いてください」と説明すると、「いつも動いている」「疲れているのに運動してこれ以上疲れることはしたくない」「そんな時間は忙しくてとれん」など、「栄養」に比べ「運動」を日常生活に取り入れることは相当難しい習慣なのだと強く印象づけられました。 今日、いろいろなところで歩いている人や体操している人を見かけると、多くの方が運動に対して意義や必要性を認識し、以前よりは運動が日常生活に定着してきたのではないかと思っています。その背景には、「運動」が、超高齢化社会に向けて生活習慣病予防(メタボリックシンドローム予防)や介護予防(ロコモティブシンドローム予防)として、欠かせない健康づくり対策として認知されてきていることや、「身体活動」という生活活動を含めた活動として啓発されていること、さらに運動指導の専門職の養成によって、その指導体制が整備されることにより、より運動を実施しやすい環境になるような対策が推進されてきていることなどがあげられます。しかし、健康日本21の最終報告では、定期的な運動習慣の割合は、男性32.2%、女性は27.0%と低く、また日常生活の歩数でも男性7243歩、女性6431歩と目標値に達していないのが現状です。今後も運動、身体活動量増加策は重要な課題であると考えています。 現代社会は運動習慣がまだまだ不十分と言える状況ですが、さらなる社会問題は生活不活発病です。これが注目されたきっかけは、東日本大震災です。被災後に環境が変化し、今まで行ってきたことができなくなり、日常生活や外出の制限を余儀なくされ、生活が不活発になります。このような生活不活発状態が続くことで、心身の機能が低下して、動けなくなる状態のことを生活不活発病と定義しています。 健康づくりの土台は“人と人のつながり”である中部大学 生命健康科学部 スポーツ保健医療学科 准教授 藤丸 郁代ふじまる  いくよ623

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