幸友18
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第三次産業の労働が増えるにつれ、フィジカルからメンタルへと疲労の質が変化している近年、疲労対策もますます重要になっています。城教授が進めている研究は「産業疲労」について。疲労という生理的な側面の究明と同時に、実務的な側面、つまり企業がどのように対応すれば疲労を軽減・回復できるかを研究しています。「自分の感情を抑えてユーザーや消費者のニーズに応える、そのときに感じるギャップで心が折れてしまう情緒的疲労が増えています。しかし、労災で一番多い業務上疾病は腰痛であるように、決して肉体的な側面も忘れてはいけません」。メンタルとフィジカルの両方の疲労対策を考える必要性を強調するとともに、中小企業における産業衛生にも言及。「労働環境が整っていない企業もまだ多い中、労働負担をいかにコントロールできるか、量的および質的なコントロールだけでなく、いかに対抗措置をとれるかを考えていきたい」。ほんの少しの変化で改善されることも多いと言います。 労働基準法や労働安全衛生法などの法律に基づき、さまざまな対策がとられてきたわが国ですが、労災の発生頻度は横ばいです。「今後は法律ベースではなく、もっと各職場・職域でのボランタリーなリスクアセスメントによって対応していかなくてはなりません」。自主的な改善策の必要性を説く城教授は、問題点の発見と同時に解決法も提示されたチェックリストを紹介。立ちっぱなしの作業には座位での作業も選択できるように椅子を用いる、重い工具は吊り下げ式にして負担を減らすなど、簡単で自ら実践できるチェックリストは、あらゆる場面で有効活用が可能です。さらに、「労働者の健康レベルの向上は、結果的に生産性やサービスの向上にもつながります。また、メンタルな疲労には人間関係だけでなく、職場全体の雰囲気や環境を変えるなどの総合的な改善策と、そうなる前の予防が大切です」。城教授は、職場における一次予防の普及にも力を注いでいます。中部大学研究支援課では、企業の皆様のニーズに応じて、関連分野の研究者を紹介しています。共同研究や委託研究など、研究支援の相談窓口としてお気軽にご相談ください。[幸友会事務局]0568-51-4852(直通)0568-51-4740(直通)幸友会事務局を介したご相談も承っております。研究支援課■作業環境の改善方法例職場の自主的なリスクアセスメントで、労働条件の改善手法の構築を支える。生命健康科学部 保健看護学科たち のりひで 城 憲秀教授[専門分野]公衆衛生学、産業保健学、環境保健学 [研究テーマ]産業疲労、国際保健協力、喫煙と健康いま、企業に求められる疲労対策とは。生産性にも影響する労働者の健康。公衆衛生学改善前作業用の椅子はあったが背もたれがない改善前騒音発生機器がむき出しのまま工場内に設置改善後椅子に背もたれをつけた改善後騒音発生機器の周辺を壁で囲う22
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