幸友18
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シーズ紹介研究室訪問 日本の成人人口の半分近くにあたる4000万人が、生活習慣病もしくはその予備軍です。この現状を放置すれば医療費がかさみ、医療行政が破綻することは目に見えています。医療費削減のためには薬ではなく普段の食事による生活習慣病予防が欠かせないと考える塚本教授は、主に酢の持つ生理機能に関する研究などをミツカングループで長きにわたり取り組まれてきました。現在は天然物もしくは微生物による発酵物から、食酢を飲みやすくする酸味抑制物質を探索する研究に取り組まれています。「一定量の酢を約2週間以上飲み続けると血圧上昇抑制、血糖値上昇抑制、体脂肪抑制などのさまざまな効果があることが分かりました。しかし、酢特有の刺激的な酸味のために継続的に飲み続けられない人がほとんどです。酸味抑制物質が見つかれば、酢が飲みやすくなり、生活習慣病予防につながります」。世の中に価値を提供して喜ばれることを研究の目的とする塚本教授らしさが垣間見えます。 微生物の持つ多様な機能を応用した塚本教授の研究範囲は、生活習慣病予防などの健康に関わる医療とシミ・ソバカス予防効果物質や保湿成分などといった美容分野を主に、微生物を使ってテルペン系炭化水素から香料やナノチューブ製造用原料を生産するケミカル素材分野、海水由来微生物による水産用飼料や安全な天然色素を生産する食品素材分野へと広がりを見せています。「グローバル社会となり、各企業も生き残りに必死です。これまでには考えられなかったパラダイムシフトが起こるなど、目の付けどころ次第では成熟産業にもビジネスチャンスの可能性が十分にあります。私の研究も成果が出始めたところですが、事業化に向けて企業と上手く連携の可能性を模索していきたいですね」。微生物のもつ多様な機能によって、私たちの暮らしがより豊かになる日は近いのかもしれません。■微生物の力を応用した研究展開微生物の無限の可能性を信じて、人に喜ばれるものづくりを研究する。応用生物学部 応用生物化学科つかもと よしのり     塚本 義則教授[専門分野]応用微生物学、発酵生産、食品栄養科学 [研究テーマ]酢酸菌の産生する有用物質の高発酵生産/味覚受容体センサーによる味覚修飾物質の微生物培養物からの探索と健康への応用日本の抱える問題を解決する研究を目指して。豊かな暮らしの実現と企業成長のカギを握る微生物。食品栄養科学酸味・塩味修飾物質の研究(探索・構造解析・作用機作)イソフラボンの微生物変換による生活習慣病予防効果物質の研究(探索・構造解析・作用機作)抗腫瘍抗アレルギー免疫賦活活性を有する多糖の生産に関する研究①②③テルペン系炭化水素からの香料の研究(生産)テルペン系炭化水素からのナノチューブ製造用原料の研究(生産)①②シミ・ソバカス予防効果物質の研究(探索・構造解析・作用機作)微生物による保湿成分の研究(探索・構造解析・生産)AGE(最終糖化産物)の分解に関する研究 ①②③水溶性安定緑色色素生産性微生物の研究(探索・構造解析)海水由来微生物による水産用飼料の研究(生産)発酵食品の製造法の研究(醤油、味噌)①②③微生物医療(生活習慣病予防)ケミカル素材(香料・IT関連)美容(化粧品)食品素材(色素、水産用飼料)19

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