幸友17
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シンポジウム 前中華人民共和国駐箚特命全権大使、前伊藤忠商事株式会社取締役会長というご経歴から、丹羽氏が肌で感じ経験した日中関係についてお話いただきました。 丹羽氏は「日中関係は日米関係である」と言います。中国と日本との関係は実に日米関係にかかっており、また日米関係を考える上でアメリカの立場がたいへん重要であると説きます。アメリカが示す政策や態度、財政状態が他国へ大きな影響を及ぼし、混沌とする政界情勢の原因となっているのです。 このように混迷する世界で中国の国力が拡大。日中関係がたいへんな影響力を持つだろうと予想される中、日本人が日本の新聞を読んでいるだけでは、中国に対する考え方が他国に比べ極端すぎるのではないかと指摘。データではなく、新聞やメディアの二次情報をもとに日中関係を語ることに警鐘を鳴らします。他国に比べ日本人だけが突出して中国人を好意的に見ておらず、このような姿勢で中国と付き合っていくことがこれからの国際社会においてどのような影響を及ぼすかについて懸念を示されました。 そして日中関係において障害となっている尖閣問題と靖国問題についても触れ、この2つの問題について「1972年の田中角栄、周恩来の第一回の政治声明、1978年の日中平和友好条約の締結、1998年、日中共同宣言の署名、2008年、『戦略的互恵関係』の包括的推進に関する日中共同声明。これら4つの政治声明をお互いが順守する努力をすることが唯一の解決法」だと述べられました。さらに「その間お互いが資源開発の問題、漁業協定の問題、日中共同の青年交流の問題を解決する努力をし、地方自治体間の友好関係をもっと発展させることが両国民のためになる」と説きます。そしてもし中央共産党が崩壊すれば日本は経済的にも政治的にもたいへんな打撃を受けると指摘。その上で「国際的な価値観というものを中国が学んで導入しなければならない。そうなるように日本とアメリカが協力、指導していかなければならない」とおっしゃいます。 さらにアメリカ・ハーバード大学への2012年の日中の入学者数を比較し、圧倒的に中国人学生が多いことを例に挙げ、日本がガラパゴス化することに危機感を抱いていると述べられました。そして「世界が中国をどう見ているか。世界が日本をどう見ているか。思いをはせることができない」ことが問題であるとし、日中関係も原点に戻って「お互いが等身大の姿でコミュニケーションを続けて、お互いが人間としてお付き合いする以外にない」と解決法を示されました。 最後に日本の将来について「一番の根幹は教育にある。根底にあるのはすべて教育です。普通の労働者の教育。普通の国民の教育。これに全力をあげるべきだと思います」という言葉で締めくくられました。PROFILE1962年3月名古屋大学法学部卒業後、同年4月伊藤忠商事入社。1998年同社社長、2004年会長に就任。2010年6月〜2012年12月中華人民共和国駐箚特命全権大使。2013年4月早稲田大学教授に就任。2006年10月〜2008年10月経済財政諮問会議民間議員、2007年4月〜2010年3月地方分権改革推進委員会委員長。日中関係と日本の将来前中華人民共和国駐箚特命全権大使前伊藤忠商事株式会社取締役会長早稲田大学特命教授 にわ ういちろう丹羽 宇一郎氏テーマ:「地域力・人間力で未来を創る」会場:5011講義室(50号館1階)Symposium 1中部大学フェア2014—人づくり・モノづくり・コトづくり・夢づくり—記念すべき10回目の中部大学フェアが、今年は開学50周年記念として、2014年9月18日(木)に行われました。地域力・人間力で未来を創る機会にしたいという思いのもとで開催されたシンポジウムのほか、毎年恒例のミニ講演会も開催。また、今年は学生主体のブースが出展され、大学、企業、自治体、地域の皆様、学生が、互いに知的財産の交流を図りました。39

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