幸友17
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地球環境産業技術研究機構理事・研究所長でもある山地氏。講演では、地球規模の有限性とさまざまな脅威のもとでいかに持続可能な発展を成し遂げていくかをエネルギーの側面から言及。「地球温暖化や温室効果ガスの増加の対応には、先進国だけでは限界がある。新興国によるCO2排出量増加といった現状を踏まえて対応しないと持続可能な発展は難しい」と解説しました。一方、わが国のエネルギー政策が福島原発事故以降、転換点に立っていることに触れ、「エネルギーの安定供給、コスト低減、環境負荷低減及び安全性をバランスよく実現することに加え、原子力発電の穴を埋めるためには、更なる省エネを進め、再生可能エネルギーを積極的に導入するとともに、クリーンな化石燃料を安定的に利用する必要がある」と述べられました。今まではもっぱら供給側の対策が取り上げられてきたが、今後は、需要側の資源(太陽電池や蓄電池などのさまざまなエネルギー機器)の重要性、さらにそれらを、情報ネットワークを通してエネルギー需給バランスに活用する必要性を説きました。「防災で最も大切なのは、危険を避けること」という言葉で幕を開けた福和氏の講演。かつて、日本人は歴史的にいくつもの自然災害を受けながら自然と折り合いをつける術を日本文化の中につくってきました。しかし、私たちは科学の進歩とともに、非常に危険な場所にまちをつくってきたと言及。さらに過去の地震から東北地方の主要な都市の多くが内陸部にあることや、津波の教訓に基づき奥州街道や浜街道が通されたことなどを例にあげ、「日本人は危険を避けることをずっと忘れずに来たが、戦後にそれを破ってしまった」と述べ、大きな被害が発生する理由の多くは、大都市に人口を集中し、沿岸低地にまちを広げ、家屋を密集させ、高層化させた私たちの生活の仕方にあると指摘しました。災害を克服するには、あらゆる人が減災のための行動を実践することだと述べ、いまだ本気で取り組まない実態に警鐘を鳴らしつつ、儒学者、細井平洲の言葉「学(がく)、思(し)、行(こう)、相須(あいま)つ=学び、考え、実践して初めて学んだことになる」を紹介し、学びを生活に活かすことの大切さを伝え、講演を締め括りました。山地 憲治氏 東京大学・名誉教授福和 伸夫氏 名古屋大学減災連携研究センター・教授エネルギー問題の構図と解決の方向性過去の震災から学ぶ防災・減災まちづくり中部大学開学50周年記念国連「持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」最終年記念連続講演会持続可能な地球と私のために中部大学は、2005年の国連「持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」の開始を受け、2006年からESDの研究活動をスタート。翌年には中部大学を幹事機関とする「中部ESD拠点」が、国連大学からESD地域拠点の認定を受けました。以降、さまざまな教育や活動を通して持続可能な社会の創造に貢献してきた中部大学は、最終年となる2014年、開学50周年を迎えることもあり、皆様とともに「持続可能な社会の創造」について考える連続講演会(全5回)をおこなってきました。ここでは、2つの講演をダイジェストで報告いたします。Report 1Report 2※第3回「エネルギー問題を考える」より※第4回「災害対応を考える」より報告37

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