幸友17
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 私は保健看護学科で主に母性看護学の授業や臨地実習指導を担当しています。「母性」といいますと、男性の読者には関係ないと思われるかもしれませんが、母性看護学では次世代を産み育むための看護として、母親と子どもだけでなく父親、家族をも看護の対象です。 赤ちゃんの誕生によって、家族関係は大きく変わります。妻が母親に、夫が父親に、そして父親が祖父、母親が祖母に…というふうです。家族全員が新しい命を大切に育むことで家族の絆が一層強くなったり、反対に危機に直面することもあります。赤ちゃんはその小さな体からは想像できないほど、物凄い影響力を持った存在なのです。 家庭でも社会でも輝くお母さんが増える一方で、真面目すぎる性格、高年齢出産や家族の協力不足、孤立した子育て環境など複合的な原因で生じる「産後うつ病」も増えています。もし、読者の奥様がうつ病になったら、ご家庭はどうなるでしょうか? 考えただけでも恐ろしいですね。妻のケアと子どもの世話をするために、夫が転職や休職をするというケースもあります。私は名古屋市主催の『共働きカップルのためのパパママ教室』の講師もしていますが、そこで強調するのも、まずお母さんが心身ともに元気であることです。 また2011年から中部大学の母性看護学の教員、院生、ゼミ生らと一緒に、「ベビービクス」(ベビーマッサージに乳児の自然な運動発達を促すエクササイズを付加したもの)を通して、乳児の母親に対する子育て支援を行ってきました。研究の結果、産後うつ病になるリスクが半減し、母親に活気が出ることが分かりました。ベビービクスで子どもとのコミュニケーションスキルがアップし、ますます子どもがかわいくなり、友達もできて悩みを共有できる。これらを通して、お母さん自身が元気になってくれるのです。 さて、「M字カーブ」という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。少子高齢化による労働力不足が危惧され始めてから、ニュースでも紹介される機会が増えてきました(図1)。M字カーブとは、日本の女子育て家族を支える−「イクボス」になろう中部大学 生命健康科学部 保健看護学科 准教授 横手 直美 よこて なおみ523

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