幸友17
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私たちが口にする食べ物には栄養素と非栄養素が含まれています。「従来の栄養学では、栄養素が体の中で消化・吸収・利用されることについての研究が中心でしたが、食物繊維などに代表される非栄養素に生理機能のあることが分かり、現在では食品に添加されるまでになりました。また私が研究を始める以前は、高次機能を持つ脳が食べ物で影響を受けることはないだろうと考えられていたため、栄養学で脳を研究対象として扱うことはほとんどありませんでした」。そのように栄養学の変遷を語る横越教授は、食べ物に含まれる成分が脳に与える影響について研究を行う栄養神経科学の第一人者。栄養、神経伝達物質、行動との間で起こる相互作用に着目した研究からは複数の商品が生まれています。江崎グリコから発売されているGABAチョコレートも、カカオ豆に含まれているGABAに抗ストレス作用があることを発見した横越教授が生みの親です。 脳の中にある神経伝達物質はアミノ酸からつくられ、私たちの記憶・学習・睡眠などをコントロールしています。アミノ酸でもある、お茶のうまみ成分テアニンにリラクゼーション効果があることも横越教授が明らかにしています。「マウスにテアニンを与えたところ、血液中に増えた後、脳の中に取り込まれ、記憶・学習などに関わる神経伝達物質ドーパミンが増加。その後の記憶実験では記憶力の向上が見られました。ヒトを対象にした実験では、リラクゼーション効果のあることが脳波の解析から分かりました」。研究室では脳と栄養の関係を分析・検証する中で、うつ病、アルツハイマー病、食欲などに関するコントロール実験も行っています。「高ストレス社会と高齢化社会によって、患者が増えている統合失調症やうつ病、認知症などの予防や進行抑制に私たちの研究成果を役立てていきたいと考えています」。横越教授の次なる研究成果に期待が寄せられています。応用生物学部 食品栄養科学科 よこごし ひでひこ横越 英彦教授[専門分野]栄養神経科学、五感栄養学[研究テーマ]食品成分の脳神経機能への効用研究■生体を中心とした研究体制新たな着目から生まれた学問分野をスタンダード化。脳と栄養の関係を解き明かし、社会に貢献する。脳と栄養の関係を解き明かし、人間らしく健康・長寿を維持できる社会を目指す。栄養神経科学シーズ紹介研究室訪問NO.1細胞、組織を用いた研究細胞培養実験組織切片灌流法動物実験種々の食品成分を与えて起こる生体内の変化から生命現象を解析し、また、食品成分の生理機能について研究する。ヒトを対象とした研究気分や感情に関する研究●情動解析●脳波解析●自律神経系調節19

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