幸友17
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 農学博士であり、蚕糸学、資源昆虫学などが専門で、ルイ・パスツール賞、国際昆虫学賞など多数の受賞歴を持つ山下学長。40年以上にわたる研究を通して解明されてきた昆虫の知と技づくりの発想を、人間社会と絡めてお話いただきました。講演はまず生物多様性の話からスタート。「一つ一つの生物種は弱く不安定。その弱い生物が身を守るには仲間をつくるしかない。生物は独立して生きているわけではなく、システムをつくって生きている。それが生態系であり、多様なものがお互いに支え合って生きていこうとするのが生物だ」と解説されました。その後、生命38億年の歴史の中で、多様な生物種が絶滅している一方で、3・5億年も生き続けている昆虫の長寿の秘密に触れ、一生のうちライフスタイルを変更する“変態”や“休眠”などの生存戦略について紹介されました。「生命の価値評価は、“早く、大きく、重たく、長く”という論理があるが、そのような動的だけでなく、静的で何もしないことも、生命活動の上では非常に重要。休眠、つまり発育停止(待ち)によって昆虫は種の安定保存、集団維持、競争と共生を統一している」と述べられました。その一方で、「携帯電話を持つことで、待ち遠しい、待ち焦がれる、待つという痛恨の思いがじわじわと漂泊され、物事を長い目で見る余裕がなくなってきた」と持論を展開。現代社会に警鐘を鳴らしました。最後に、ミツバチがほかのミツバチに花の場所を伝える8の字ダンスを紹介し、中でも学習できない約10%のハチの存在を挙げ、そのハチこそが、新たな花畑を見つけてくる貴重な存在だと説明。「資源が有限の社会では、未来開拓者を次々とつくっていく必要がある。一つの知の積み重ねではなく、いろいろな知の領域を個体間で分担し合うのが社会知(集団知)。社会全体を発達させる知と、個人の生存のための知の二つの側面から考えることが持続可能な発展につながる」と、講演を締め括りました。インターネット社会におけるコミュニケーションの在り方の変化。長い歴史の中で生き長らえてきた昆虫の不思議。経営に活かすためのヒントとするべく、「情報」や「知」について考えた講演会。今号も、講演の模様をダイジェストでお伝えします。第22回 企業経営講演会2014年7月16日(水)開催〈演題〉昆虫から学ぶ知と技〈講師〉 やました おきつぐ山下 興亜氏 中部大学長16

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