幸友17
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 東部丘陵線・リニモの杁ケ池公園駅から徒歩5分、名古屋のベッドタウンとして発展する長久手市の住宅地の一角に佇む白壁の和風建築が名都美術館だ。 名都美術館のコレクションは、当時、林テレンプ株式会社の社長をされていた林軍一氏が、仕事の合間に自らの心を休めるために集められたものが中心となっている。軍一氏の父が岐阜県の出身だったことから、同郷の熊谷守一の作品を購入したことに端を発し、その後、ある作品に強い衝撃を受けたことをきっかけに、美人画のコレクションにのめり込んでいったという。その作品というのが伊東深水の「湯気」である。この作品がコレクションに加わった後、休日になると一日中出かけず、この作品を鑑賞して過ごしたこともあったという話もあるほどだ。 ほかにも、近代美人画の巨匠と評される上村松園、鏑木清方をはじめ、横山大観、平山郁夫など、近現代日本画を代表する画家たちの作品が揃う。ただ、軍一氏はもともと美術館を作るつもりで絵を集め始めたわけではない。一点一点の作品と向き合い、対話しながら手元に置いていった結果がコレクションになったという。では、なぜ美術館の開館に至ったのか。それは、元愛知県知事の桑原幹根氏との出会いをなくしては語れない。 軍一氏のコレクションを知った桑原氏は、「絵を公開すれば、絵を収集できたことに対して、世の中への恩返しになる」と提案。この言葉に感銘を受けた軍一氏は1987年、提案に応えるように美術財団を設立した。当初は、本社ビル(名古屋市中区)の2階に展示していたが、もっと寛いだ空間で、落ち着いて絵を楽しんでいただけるようにと現在の地へ移転したのが1992年のこと。その際に合わせて作られ絵画鑑賞、それはときに疲れた心を癒してくれる寛ぎの時間。ときに勇気を与えてくれる希望。またある人にとっては、明日を頑張る活力源になることも。今回は、自動車内装部品のトータルサプライヤー、林テレンプ株式会社と関係が深い林美術財団運営の名都美術館をご紹介します。5名都美術館13

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