幸友16
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 日本を代表する実業家、澁澤榮一翁の言葉に「論語と算盤」があります。「個人を利するだけでなく、国家・社会をも利する事業でなければならない」。すなわち、企業は利益のみに固執した経営を行うのではなく、正しい道理に基づくべきであり、国家・社会にも貢献できなくてはならないという信念を述べた言葉です。清水建設の創業以来の姿勢とも合致しており、「論語と算盤」は当社の経営と環境への取り組みの基本理念となっています。 当社では東日本大震災を契機に、「ecoBCP(省エネ事業継続計画)」という考え方を提唱しています。平常時のeco(省エネ)活動であっても、多少投資が必要です。巨大地震等の非常時のBCP(事業継続計画)だけを強化しようとしても発電機を設けるなど、やはり費用がかかります。平常時と非常時の電力運用を互いにうまく利用し、無駄なく体系的に組み合わせることによって施設の価値を高めていくことが当社の提唱するecoBCPです。 当社の新本社は、国土交通省管轄の建築環境総合性能評価システム(CASBEE)で最高ランクのSランクを獲得。また、アメリカを中心に世界で広がりつつある建物環境総合性能評価指標(LEED)でも、新築オフィスビルとしては日本初のゴールド認証を獲得しました。新本社は、東日本大震災よりも前に最先端の環境配慮型に決めて建設を開始したところ、東日本大震災以降のさまざまなことに対応できるモデルビルとなりました。太陽光発電、風力発電などのクリーンエネルギーは、安定的に発電できません。そこで、クリーンエネルギーと蓄電池を組み合わせ、エネルギー需要の変化に合わせてITネットワークで最適制御するマイクログリッドにより、平常時は蓄えた電力を建物電力使用のピークに放電し、契約電力量を削減。また、蓄えた電気を停電時に放電することで非常時の発電機以外での電力供給が可能となり、平常時のecoと非常時のBCPを両立しています。さらに、照明・空調の工夫、施設情報を一元管理するIP統合ネットワークの構築、パソコン消費エネルギーの「見える化」などの取り組みにより、初年度のCO2量を62%削減できました。今後、運用 提唱するecoBCPについてProfile宮本 洋一1947年、東京都生まれ。1971年、東京大学工学部建築学科卒業。同年、清水建設株式会社入社。清水建設入社後、建築畑を一貫して歩み、東京都庁第一庁舎やDNタワー(第一・農中ビル)、工学院大学八王子校舎など、大型建築工事を指揮。阪神大震災後、1997年に耐震営業推進室の初代室長に就任。営業最前線で新技術を売り込み、国立西洋美術館や大阪市中央公会堂の免震レトロフィット工事を受注。東日本大震災を経て、これからの安全で安心な建物・街づくりの基本的考えとして「ecoBCP」を提唱。2007年より現職。シミズの環境への 取り組み[講師]清水建設株式会社 代表取締役社長 宮本 洋一氏みやもと よういち日時:2013年4月24日(水)16時50分〜会場:名古屋東急ホテル3階第25期総会講演ダイジェスト37

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