幸友16
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Recovery Action Plan 元気回復行動プラン)という自己管理法があります。その方法の第一段階では、「元気でいるためのツールボックス」という良い習慣のリストを作るのですが、その例として「古い懐かしい写真やスクラップ帳、アルバムなどをみること」が運動習慣やバランスのとれた食事などと並んで挙げられています。 認知症患者の治療では懐かしい品物や写真を手掛かりに思い出話をする「回想法」が広く用いられ、症状軽減や精神安定に効果を発揮しています。 自分の心を和ませたり、励ましたりしてくれる思い出の写真や言葉を手帳やスマホに入れて持ち歩いている人は少なくないと思いますが、未だの方は是非。 障害者の社会復帰を考える時、「働く場」を得ること以上に大切なのが、「居場所」を得ることです。違いを超えて気持ち良く集える、居心地の良い場、「居場所」が地域に暮らす障害者の健康を維持し、再発を予防してくれる様子をたくさん見てきました。 一人暮らしの人にとってはもとより、家族と暮らす人にとっても、「仕事」でも「家庭」でもない「居場所」が人を社会に生きる存在にしてくれます。 年を重ねて行くと、親しい友人との別れや、居場所を失うことが避けられませんが、生きている限り新たな人との出会いや再会もあるものです。そんな出会いを大切にして、集い、居心地の良い場を創っていくこと、今を大切に生きることが後になって自分にとって意味のある思い出になり、将来の自分を支えてくれるのではないでしょうか。 「健康とは病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも全て満たされた状態にあることを言います。」(世界保健機関憲章前文、日本WHO協会訳) 成すことができない状態になった時、それでもそこに居ること、在ることに意味を見いだせる成熟した社会を身近なところから創っていくことが、健康で居続ける秘訣かもしれません。大学では二十歳前後の青年を相手に日々挌闘(?)している私ですが、週に半日ずつは、精神科病院と福祉施設で障がいをもつ「おとな」の方々のリハビリテーションをお手伝いしています。本稿では、そんな臨床活動の経験から「おとなの健康」について思うことを述べさせていただこうと思います。24

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