幸友16
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シーズ紹介研究室訪問 切り花を買うと、抗菌剤や糖が入った延命剤を渡してくれる花屋さんが増えてきました。この延命剤は咲いた花を長持ちさせるためのものです。山田准教授は、つぼみの状態から咲いていく花の美しさに着目。切り花の観賞期間を長くする技術開発、特にバラの花弁成長制御による開花のコントロールを目指して、遺伝子レベルの研究を進めています。これまでの研究で、開花メカニズムには“細胞壁の緩み”と“糖の蓄積”が重要であることが明らかになりました。「開花速度を調整する目的で、細胞壁の緩みに関する遺伝子を研究したところ、ある遺伝子とタンパク質の働きが確認できました。また、花の大きさには糖代謝が影響しており、糖代謝の活発化に、植物ホルモン『オーキシン』が作用することが分かりました」。花の開花速度や大きさのコントロールが可能になれば、冠婚葬祭でのディスプレイ用として使う花などへも応用価値がありそうです。 世界各地で研究成果と絡めてつぼみの状態から花が咲いてゆく過程の美しさの話をすると、日本企業では興味を示してもらえるのに対し、海外企業ではいい反応がありません。いかに大きく花が咲くかに興味がある海外の方から、理解を得られることが少ないのだそうです。「国民性の違いを感じます。日本人ならではの美への感性がありそうですね」。今後は既存の色・形・大きさに加え、花の“香り”を考慮しながら新品種を開発する研究を計画。「花は趣味の世界であり、食料や作物の研究に比べ重要性が低いと言われます。しかし、これからはより質の高い、心豊かな生活が求められ、家庭にも職場にも花で飾られた環境が大切になってくるはずです」と、花だからこそできる役割を大切にする山田准教授。花を使った環境浄化にも力を入れ、汚染された土壌から、重金属などを花の根から吸収して浄化する研究も予定しており、社会だけでなく地球環境にも貢献することが期待されそうです。応用生物学部 環境生物科学科 やまだ くにお山田 邦夫准教授[専門分野]花き園芸学、植物生理学[研究テーマ]観賞花きの品質向上を目指した生理学的および分子生物学的研究■切り花の美しい観賞期間延命に取り組む研究花の開花速度と大きさをコントロール。花だからこそできる役割に期待。花の開花を遺伝子レベルで解析し、心豊かな生活環境をつくる。NO.1 植物生理学・園芸生理学19

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