幸友16
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中田 智洋(なかだ ともひろ)氏/昭和25年岐阜県生まれ。駒澤大学経済学部卒業後、家業を継ぎラムネ製造業からもやし生産業へ転換。昭和55年ナカダ産業(株)設立。平成2年社名をサラダコスモに変更し、代表取締役社長に就任。緊急時に備えて海外で大豆の生産に取り組む(株)ギアリンクスの社長も務める。 私がいつも心に留めている思想であり人生観、これが「長所に三重マル」です。企業、家族、友人、地域などのつながりの中で、人間関係の大切さを常々感じます。世の動きには理屈だけではなく、人の感情や感性が大きく影響していることは間違いありません。 この言葉が私の格言になったのは、私が40歳の頃。父から継いだ野菜生産を本格的に始めて10年目に聞いた、有名な経営コンサルタントの先生の話がきっかけです。「今までに四千社以上の会社と経営者を訪ねたが、短所を直そうとして良くなった試しはない」と話す先生に、私は「例外は?」と質問をしました。すると先生は「ただの一つもありません」と回答。この言葉を信じ抜こうと決めた瞬間でした。数年後、私は事業最大のピンチに陥りました。カイワレ大根のO157騒動です。何の罪もない私たちの商品が疑われ業績は大幅ダウン。しかしそのとき取った行動は、誰かを恨んでも仕方ない、今できることを考え、新商品を開発し、早期の業績回復を目指すことでした。 その後、平成18年に教育型・観光生産施設「ちこり村」を開設しました。当施設の各所には日本儒学の最高峰、佐藤一斎の言葉を掲げています。学生時代に学んだ仏教と儒教はよく似た発想があり、その極意は人の役に立つことであり、幸せになるためのコツです。訪れた方々にその考えを伝えることが私の一つの役割でもあります。また先般、岐阜県の子どもたちによるミュージカル公演を南米で実施しました。南米には日本からの移民農家がたくさんいます。南米の農業支援と岐阜県の食料自給率改善のために立ち上げた企業の代表として、現地の皆様に何か日本らしいものを届けたいという思いからおこなったことです。 これら全てにつながりがないように見えますが、経営や商品政策を考える上で大切なのは最上位にある人生観です。私は、そこに「長所に三重マル」があります。人間関係がスムーズであるのは、この言葉のおかげなのです。いい人生をつくるためにもっとも相応しい思想。株式会社サラダコスモ代表取締役社長「長所に三重マル」人が真に使いやすい“ものづくりと空間デザイン”をおこなう専門家具メーカー。親が子を思う気持ちで農業に取り組み、地域活性化にも貢献する発芽野菜メーカー。未来と世界を見据えながら、自らの信念とともに事業に取り組み続ける企業経営者のおふたりにお話を伺いました。12

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