幸友15
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年10%くらい上がっています。それでも中国の半分か、3分の2程度ですからコスト的にもまだ充分魅力はあります。宗教は、ベトナムだけが日本と同じ大乗仏教で、ほかの3カ国は戒律の厳しい上座部仏教ですが、タイと似ていると思っていいでしょう。インドネシアのイスラム教のような宗教的な対立を心配する必要はありません。カンボジアもフン・セン首相になって10年以上、長期政権が続いて安定しています。小野 急な発展により港が飽和状態になることもありますが、港湾のキャパシティについてはどうですか。上田 ベトナムは4カ国の中で先に市場経済化を進めたこともあり一番恵まれていると思います。特にサイゴン港からの輸送費は、近隣の港と比べるとかなり安い。カンボジアの工業団地の商品もここから出荷されているほどです。さらに日本のODAも入り、ホーチミン近郊に大きな船が入れる港がもうすぐスタートします。カントリーリスク、馴染みやすさ、信頼度など総合して考えてもベトナムは魅力があります。小野 では次に、ベトナム進出の経緯を河村様からお願いします。河村 当社は、三菱自動車向けのシートや内装品を製造していますが、その厳しいコスト競争の中で生き残っていくためにベトナムホーチミンへ進出、まもなく10年になります。ベトナムでは、シートのカバーの裁断と縫製をしています。当初、中国やタイへの進出も検討しましたが、コストメリットを最重点に置いたとき、その当時、中国の約10分の1、日本の20分の1以下の賃金で雇えましたので、中国へ出るよりベトナムを選択しました。インドネシアは航路がベトナムより長くなりますし、カンボジアやラオスも当時はまだ工業に適している状況ではないと判断しての決定でした。小野 ご苦労された点はありますか。河村 日本からベトナムへ見学に来られると「ベトナム人は勤勉ですね」と皆さんがおっしゃいます。確かに勤勉ですが、日本的な考え方を教えるのは大変でした。製造の工程を教えても、次第に、順序を勝手に変えてしまいます。「なぜそうするの?」と聞くと「こっちの方がやりやすいから」と言う。結果、不具合が出ますよね。でも私は悪いことはしていないと言う。習慣や風土、何もかもが違うので仕方ありません。日本企業で働いているからではなくて、これは日本に納めなくてはならないものだから日本と同じ品質で作る必要がある。そのためにはこの順序で作らなければいけないということを日々教えるんです。3、4年くらい要しました。ただ、ベトナム人は学習しようとする気質は高いです。また、仕事量が少なくなると、転職を考え始めます。暇でも給料はもらえるのに、仕事に就いている以上、仕事をしたいんです。そういう意味では勤勉であることに間違いありません。でも途中で辞めてしまう人もいます。その当時ベトナム進出が盛んで、ホーチミンにどんどん企業が増えました。すると必然的に起こるのが賃金の上昇です。人を採るために給料を上げなくてはなりません。時給10円の差で他社へ変わります。それが一人ではなく、友人合わせて10数人ごそっと辞めていくのです。ベトナム進出で見えた国民性とビジネス習慣第2章 成長の潜在力を持ち、 一体化して発展していく「CLMV」。 うえだ よしあき上田 義朗氏流通科学大学 教授(社)日本ベトナム経済交流センター 副理事長1955年大阪生まれ。1983年神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程・満期退学。同年(財)日本証券経済研究所大阪研究所・研究員。1988年流通科学大学商学部助教授、その後に教授。1999年日本ベトナム経済交流センター顧問、その後に副理事長。07

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